最新記事

東京五輪

女子陸上短距離ジョイナーの「伝説と疑惑の世界記録」は東京で破られる?

Joyner’s Records Could Be Broken in Tokyo, Her Husband Says

2021年7月29日(木)19時23分
マギー・ジャイル
ソウル五輪のジョイナー

ソウル五輪で3個の金メダルと1つの銀メダルを獲得したジョイナー。100と200の記録は33年間破られていない Olympics-YouTube

<ソウル五輪以来33年破られていない100と200の不滅の記録、圧倒的過ぎるだけにドーピング疑惑もつきまとった疑惑の記録は破られ、東京大会で歴史が作られるかもしれない>

陸上短距離の女王と呼ばれた故フロレンス・グリフィス・ジョイナーが1988年のソウル五輪で樹立したオリンピック記録は東京で破られる可能性があると、アメリカの元陸上代表でジョイナーの元夫のアル・ジョイナーがAP通信に語った。

webw210729_joyner2.jpegソウル五輪のジョイナー夫妻(1988) REUTERS

「フロー・ジョー」の愛称で親しまれたフロレンス・ジョイナーが樹立した100mと200mの記録は33年間破られていない。今の陸上女子短距離のトップ選手の多くは、彼女が活躍した当時、まだ生まれていなかった。ソウル五輪直前の代表選考会で出した100mの世界記録10秒49と五輪本番の200m決勝で出した21秒34は不倒の大記録として、現役スプリンターの目の前に立ちはだかっている。

記録更新が期待されるのはジャマイカ勢だ。北京とロンドン大会の金メダリストで、出産後に復帰した「マミー・ロッカー」ことシェリーアン・フレイザープライスは6月にジャマイカで行われた競技会で女子100m歴代2位となる10秒63をマーク。チームメイトのエレイン・トンプソンも7月に10秒71を出した。アメリカの女子短距離のホープ、シャカリ・リチャードソンも4月に10秒72をマーク。フロレンス・ジョイナーが1988年9月24日にソウルで出した女子100mのオリンピック記録10秒62が破られるのは時間の問題だろう。


「私を超えてほしい」

AP通信が伝えた詳細は以下のとおり。

アル・ジョイナーは亡き妻が打ち立てた記録が破られても驚かないと話した。たとえ東京で破られなくとも、2024年のパリ五輪か、それ以前に新記録樹立のチャンスがあると、彼は見る。自分の記録が破られるのは、フロレンスにとっては本望だ、というのだ。

「彼女はあるとき私に言った。『若い選手には私の後を追いかけてほしくない。私を超えてほしい』と。それが彼女の変わらぬ夢だった」

フロレンスの記録には疑問がつきまとい、過去には公認取り消しを求める声も上がった。

当時としては考えられないようなタイムであること、以後30年余りもコンマ14秒圏内まで迫れたスプリンターがいないことから、ソーシャルメディアなどでは、露骨にドーピングを疑う声が上がっている。100mの世界記録が出たインディアナポリスでの予選会では、かなり風が強く、他の記録の多くは「追い風参考」となったが、ジョイナーが走ったときは風速ゼロだったとして世界新と公認された。またソウル五輪でベン・ジョンソンが出した記録がその後のドーピング検査で剥奪されるなど、男子の記録はたびたび公認が取り消されてきたにもかかわらず(現在の世界記録は2009年にウサイン・ボルトが出した9秒58)、ジョイナーの記録は一貫して問題なしとされてきたことも疑いの目で見られている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ドイツ連立与党、国民の不満が過去最高=世論調査

ビジネス

スリランカ向け支援、IMFが2回目の審査承認 経済

ワールド

米大統領選、トランプ氏がバイデン氏を2ポイントリー

ビジネス

焦点:FRB、政治リスク回避か 利下げ「大統領選後
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 2

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 3

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「勝手にやせていく体」をつくる方法

  • 4

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 5

    長距離ドローンがロシア奥深くに「退避」していたSU-…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    【衛星画像】北朝鮮が非武装地帯沿いの森林を切り開…

  • 8

    謎のステルス増税「森林税」がやっぱり道理に合わな…

  • 9

    バイデン放蕩息子の「ウクライナ」「麻薬」「脱税」…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 1

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 2

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...? 史上最強の抗酸化物質を多く含むあの魚

  • 3

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 4

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 5

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 6

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開する…

  • 10

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中