最新記事

教育

地域人材の「助教諭」登用で開かれた学校運営を

2021年7月21日(水)13時30分
舞田敏彦(教育社会学者)
小学校のクラス

人手不足は学校教育の場にも及んでいる Complexio/iStock.

<戦後の人員不足だった1950年には、全国の公立小学校の教員の4分の1が臨時教員だった>

人手不足が言われて久しいが、教員の世界にまでそれが及んでいる。特定教科の担当や産休代替に普通免許状を持つ教諭を採用できないため、助教諭を雇ってしのいでいる自治体が多い。

助教諭とは、普通免許状を持つ教諭を採用できない場合に限り置ける職で、要件は臨時免許状を有していることだ。臨時免許状は、大学で教職課程を終えていなくても、教育職員検定試験に合格することで得られる(任命権者の都道府県内で3年間有効)。ピアノの個人教師に臨時免許状を付与して音楽を教えさせるなど、事例はいろいろある。

ちなみに戦後すぐの頃は、助教諭への依存率は今よりずっと高かった。敗戦後の教育の民主改革により、新たな学校が雨後の筍のごとく次から次にできたが、校舎や教室だけでなく教員も不足していた。その様子は数字にはっきり出ていて、1950(昭和25)年の公立小学校の本務教員は30万3130人だったが、うち7万7548人が助教諭と記録されている(文部省『学校基本調査』)。率にすると25.6%で、全教員の4人に1人が助教諭だったことになる。

中学と高校はどうだったか、現在はどうか。小・中・高の助教諭比率を、1950年と2020年で比べた表を作成してみた<表1>。

data210721-chart01.png

1950年の助教諭比率は小学校が25.6%、中学校が11.2%、高校が2.9%となっている。今とは比べ物にならない高さだ。これは全国の数値だが、地域別に見るともっと高い値が出てくる。1950年の公立小学校本務教員の助教諭比率を都道府県別に出して、高い順に並べると<表2(次ページ)>のようになる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P4日続落、割高感を警戒 エヌビ

ワールド

ゼレンスキー氏が19日にトルコ訪問、ロシアとの交渉

ビジネス

日産、九州工場で24日から再び減産計画 ネクスペリ

ビジネス

NY外為市場=ドル対円で一時9カ月半ぶり高値、高市
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中