最新記事

災害

中国河南省「1000年に1度」の豪雨 25人死亡、約10万人避難

2021年7月22日(木)07時20分
中国中部・河南省で続く豪雨により12人が死亡した鄭州市

中国中部・河南省で続く豪雨により、省都の鄭州市で12人が死亡した。また、約10万人が安全地帯に避難している。20日、同省鄭州市で撮影(2021年 ロイター/cnsphoto via REUTERS)

中国中部・河南省で豪雨により発生した水害で、同省でこれまでに少なくとも25人の死亡が確認された。このうち12人が省都の鄭州市の地下鉄構内で死亡。一段の降雨が予想される中、鄭州市では約10万人が避難している。国営の新華社が21日、地方政府の情報として伝えた。

同省は先週末から豪雨に見舞われており、主要河川の堤防が決壊したほか、十数都市で道路が冠水。多くの高速道路が閉鎖された。鉄道も多くが運行を停止し、航空便には遅延や欠航が発生するなど数百万人の生活に影響が出ている。

地元メディアによると、鄭州に隣接する鞏義市でも少なくとも4人が死亡した。大雨により建物の倒壊が相次いでいる。

地元当局は20日夜、同省洛陽市にあるダムに20メートルの亀裂が生じ、決壊寸前だと警告した。

一方、鄭州市の洪水対策本部は、市内の貯水池が決壊したと明らかにした。

鄭州市では地下鉄の構内が水に浸かり12人が死亡、500人以上が救助された。ソーシャルメディアに投稿された映像には、乗客が暗闇の中で胸の高さまで迫った水に浸かっている様子が映っている。

今後3日間、河南省全域でさらなる雨が予想されており、人民解放軍は5700人以上を派遣して捜索や救助活動に当たっている。

黄河の流域に位置する鄭州では17日夕方から20日夜までの降水量が617.1ミリに達した。これは同市の平均年間雨量640.8ミリにほぼ匹敵する。地元メディアは、この3日間の雨量が「1000年に1度」のレベルだったとする気象学者のコメントを伝えた。

米国やカナダが最近熱波に見舞われる一方で、欧州西部では大洪水が発生した。専門家は中国の大雨も地球温暖化に関係していることがほぼ間違いないと指摘する。

香港城市大学のジョニー・チャン教授(大気科学)は「これらの共通点は明らかに地球温暖化だ。こうした異常気象は将来、もっと頻繁に起きるだろう」と予想。政府や自治体が適応するための戦略をまとめる必要があると述べた。

<洪水対策は困難>

中国の習近平国家主席は21日、国営テレビを通じて発表した声明で「洪水を防止する取り組みは非常に困難になっている」と指摘した。

台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は鄭州工場で米アップルのiPhoneの組み立てを行っているが、施設への直接的な影響はないと述べた。

中国の自動車大手、上海汽車(SAIC)は鄭州工場の物流に短期的な影響があると説明した。日産自動車は生産を停止したと明らかにした。

国営メディアによると、鄭州は21日時点で依然として交通がまひしており、学校や病院も深刻な浸水の被害を受けている。火曜日から幼稚園に閉じ込められている子供たちもいるという。

人民日報は病床数が7000を超える市内の大規模病院で電力が失われ、予備電源も機能していないと報じた。

気象当局によると、豪雨は21日夜まで続く見通しという。

隣接する河北省では21日以降、中程度から激しい降雨が予想されているため、同省は省都の石家荘市を含む複数の都市で警報を発令した。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・あなたは豪雨災害がなぜ起こるかを分かっていない 命を守るため「流域」を確認せよ
・中国・四川省で豪雨、住民2万1000人が避難 全土に警報
・洪水でクモ大量出現、世界で最も危険な殺人グモも:シドニー


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トルコCPI、5月は前年比+75.45% 「最悪期

ビジネス

トヨタ・ホンダ・マツダなど5社が認証不正、対象車の

ビジネス

三井物、パパス・メンズビギなど展開のビギHDを完全

ビジネス

ユーロ圏製造業PMI、5月改定47.3 難局脱した
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「肖像画ドレス」で歴史に名を刻んだ、プリンセス御用達

  • 3

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...すごすぎる日焼けあとが「痛そう」「ひどい」と話題に

  • 4

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 5

    1日のうち「立つ」と「座る」どっちが多いと健康的?…

  • 6

    ウクライナ「水上ドローン」が、ロシア黒海艦隊の「…

  • 7

    ヘンリー王子とメーガン妃の「ナイジェリア旅行」...…

  • 8

    「娘を見て!」「ひどい母親」 ケリー・ピケ、自分の…

  • 9

    中国海外留学生「借金踏み倒し=愛国活動」のありえ…

  • 10

    「みっともない!」 中東を訪問したプーチンとドイツ…

  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「肖像画ドレス」で歴史に名を刻んだ、プリンセス御用達

  • 3

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 4

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 5

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 6

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中