最新記事

熱波

北米で歴史的「ヒートドーム」現象、カナダで47.5度を記録

Temperatures In Pacific Northwest 50 Degrees Above Average During Heat Wave

2021年6月29日(火)19時12分
ベンジャミン・フィアナウ
記録的猛暑のなか、水浴びをする少年

記録的猛暑のなか、水浴びをする少年(6月27日、米オレゴン州ポートランド) Maranie Staab-REUTERS

<上空を覆いつくした「1000年に1度」の熱の幕が森や水や人を脅かす>

北米大陸の太平洋岸北西部では、オレゴン州ポートランドやワシントン州シアトルをはじめとする各都市で気温が史上最高を更新、華氏110度(摂氏43.3度)を優に超える暑さが続いている。気象の専門家は、この強烈な熱波は少なくともあと1週間は続くと予測している。

この地域全体に居座る記録的な高気圧のせいで、半球形の熱の幕、いわゆる「ヒートドーム(熱のおおい)」が発生した。現在、ワシントン州とカナダのブリティッシュコロンビア州の上空を覆い尽くしている。気象学者によると、太平洋岸北西部の上空でこうした現象が起きる確率は「1000年に1回」だという。

【動画解説】ヒートドームとは何か?

この地域では現在、平年と比較して摂氏約14〜28度ほど気温が高い状況が続いている。6月28日のシアトルの気温は、これまでの最高気温を約4度上回り、ポートランドでは2日連続で44度を超える暑さに見舞われている。

アメリカ国立気象局では、6月最終週に入って太平洋岸北西部を襲っている熱波は「歴史的で、危険で、長期にわたり、前例がないもの」になると予測している。地球温暖化がヒートドームの原因とも言われており、バーモント州選出のバーニー・サンダース上院議員を含む多くの議員が、世界的な気候変動に歯止めをかけるよう、改めて呼びかけている。

3分の2がエアコンもたず

ニュージーランドの国立水・大気圏研究所(NIWA)の気象学者ベン・ノルは6月26日、記録的な熱波に見舞われているポートランドの27日の気温は、全地球表面の99.8%における気温を上回るとの見方を示した。この日地球上でポートランドよりも暑くなるのは、アフリカのサハラ砂漠、ペルシャ湾、そしてデスバレーを含むカリフォルニア州の低地砂漠だけだろうと、ノルは書いていた。

あまりの暑さに、ポートランドでは路面電車のケーブルが溶けた。

シアトルでは27日、最高気温が40度を記録。ブリティッシュコロンビア州のリットンなどのカナダの町では、46.6度に達した。翌28日のリットンの気温は47.5度を観測した。

気象学者や環境安全の専門家は、太平洋岸北西部における森林火災のリスクが高まっていると警告する。記録的な暑さに加え、アメリカ西部の各州では干ばつが悪化の一途をたどっており、専門家は今後数日の間に、また新たな森林火災が発生する可能性が高いと警告している。

オレゴン、アイダホ、ワシントンの3州には現在、異常高温に関する注意報や警報が発令されている。カリフォルニア州北部の一部や、モンタナ州、ネバダ州でも、6月最終週に入って、気温が37.7度をはるかに超える状況が続いている。エアコン需要が高まる一方で、水力発電に用いられる水源の水位は通常より低下しているとの報道もある。

地域の統計によると、太平洋岸北西部に住む人のうち約3分の2は、エアコンを所有していない。気象やエネルギーの専門家は住民に対し、窓の外側をアルミホイルで覆い、さらに部屋の内側に面した部分に段ボールを置くことで、室内の気温を低く保つようにとアドバイスしている。

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ブラジル経済活動指数、第1四半期は上昇 3月は低下

ビジネス

マイクロソフト、中国の従業員700人超に国外転勤を

ワールド

アルゼンチン、4カ月連続で財政黒字達成 経済相が見

ワールド

トランプ氏、AUKUSへの支持示唆 モリソン前豪首
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 7

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 10

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中