最新記事

移民政策

外国人受け入れの是非は、経済的利益だけで計算できるほど単純ではない

AMERICA’S IMMIGRATION CALCULUS

2021年5月19日(水)17時42分
浜田宏一(元内閣官房参与、米エール大学名誉教授)

人種的平等と一人一人の市民権を保障することはもちろん正しい政策だ。事実、アメリカが労働市場の多様化によって経済的利益を実現せんとするなら、公平性は不可欠だ。しかし、移民によって「敗北」する立場の人々は、より大きな公平性を求めて抵抗する経済的・政治的インセンティブが働く。大統領選挙に敗れたとはいえトランプに7400万票もの支持が集まったことが、それを物語っている。

バイデン政権は、移民と人種に関して難題に直面している。歴史的、経済的な理由からすれば、アメリカは移民に依存し続けるべきだ。だが、そこには常に既存の集団の利益を守るために制限を掛ける政治的圧力が存在する。

人種的平等については、1950年代と60年代に起きたアメリカの公民権運動が、法的・行政的な人種隔離制度を解体させる著しい成功を収めた。しかし、トランプが2016年の大統領選挙に勝利したこと、20年にも強い存在感を見せたことは、依然として一層大きな進歩が必要であることを思い知らせた。徐々にではあっても、バイデン政権がそれを成し遂げることを期待するばかりである。

©Project Syndicate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米英外相、ハマスにガザ停戦案合意呼びかけ 「正しい

ワールド

ウクライナ大統領、武器供与の加速訴え NATO事務

ワールド

英、25年までに中国製の監視装置撤去へ 安全保障の

ワールド

イスラエル首相らに逮逮捕状準備か、ICC 政府内で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ナワリヌイ暗殺は「プーチンの命令ではなかった」米…

  • 10

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中