最新記事

コロナ出口政策

ドイツで注目の出口政策モデルプラン 「デイパス」とは

2021年4月7日(水)16時15分
モーゲンスタン陽子

クイックテストを受け、陰性の結果が出た人は、その当日に限り有効な「デイパス」を受け取る...... REUTERS/Kai Pfaffenbach

<暗い冬が終わり日が長くなる春先は、ドイツ人の誰もが外出したくなる季節だ。しかし、長引くロックダウンに一般市民の我慢も限界に達している。そんな中、ある出口政策モデルプログラムが注目を集めている。>

どうやって「普通」を取り戻すのか

2月に大寒波が襲ったせいか、ドイツの春は今年はやや遅めに訪れた。3月末、サマータイムが始まり、気温が上昇し、日差しが強くなると、復活祭間近ということもあって、大勢の人々が戸外に繰り出した。現在はまだロックダウン中だが、街角や公園に人々が集う風景はまるでパンデミックなどないかのようだ。警官はいるが、特に取り締まりもない。コロナ抑止の行動制限に反対するデモでもなく、春先に太陽を求めて集う人々を、警察も取り締まる気になれないのだろう。

ロックダウンがあまりにも長引き、ルール変更も多すぎて、現在どんな制約があるのかもはや人々も追いつけていない。だが、欧州は第三波に突入しており、状況は「クリスマスより悪くなる」と言われている。メルケル首相も第三波は基本的に「新しいパンデミックの到来」だと述べた。つまり、1年間頑張った末に「振り出しに戻る」というわけだ。人々の我慢もそろそろ限界に達している。

これから日差しがどんどん強くなり、ドイツ人にとって大変重要な夏休みのシーズンもやってくる。いつまでも市民の生活を制限するわけにもいかない。そこで、バーデン=ヴュルテンベルク州の大学都市テュービンゲンの実験モデルが注目を集めている。

テストで陰性ならデイパスをもらえる

テュービンゲン大学とテュービンゲン地区ドイツ赤十字、および州が協力して実験的に行われている「安全とともに開く」プロジェクトでは、市中心部の数カ所で無料で提供されているクイックテストを受け、陰性の結果が出た人は、その当日に限り有効な「デイパス」をもらい、市内の施設を比較的自由に利用できるというものだ。例えば、レストラン屋外での食事やショッピングはもちろん、劇場や映画館などにも入れるようになる。その際もマスク着用やソーシャルディスタンシングなどのルールはこれまでどおり適応される。

実験プログラム開始に伴い、テュービンゲンでは屋内での舞台も復活した。ホテルやスポーツ施設などはまだこれに含まれていないが、それでも市民の反応は上々のようだ。14歳以上の市民、および近郊の人々もこのシステムを利用できる。

3月15〜21日の第1週目を終えた後の報告によると、3万件弱の検査数のうち、ドイツ赤十字社ではなく民間協力会社がサポートしている3つの検査所で約30の誤診が報告されたが、これもトレーニングを徹底すれば克服できるとして、プロジェクトの続行が推奨された。

だが、続く3月末にかけて気候が良くなると、市民だけではなく、噂を聞きつけた近郊都市からも人々が押し寄せ、検査数が週に6000件も増加。9つある検査ステーションのキャパシティはそれぞれ1日9000なので対応可能範囲ではあるものの、25日〜28日には7日間発生率が35から66.7と2倍近くになってしまった。現在では110を超えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米CB消費者信頼感、5月は102.0 インフレ懸念

ワールド

イスラエル戦車、ラファ中心部に初到達 避難区域砲撃

ワールド

香港、国家安全条例で初の逮捕者 扇動の容疑で6人

ワールド

サウジ国王、公務に復帰 肺炎治療後初の閣議出席=報
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 2

    汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏最新インタビュー

  • 3

    プーチンの天然ガス戦略が裏目で売り先が枯渇! 欧州はロシア離れで対中輸出も採算割れと米シンクタンク

  • 4

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 5

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 6

    コンテナ船の衝突と橋の崩落から2カ月、米ボルティモ…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    TikTokやXでも拡散、テレビ局アカウントも...軍事演…

  • 9

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 10

    メキシコに巨大な「緑の渦」が出現、その正体は?

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 7

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 8

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 9

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 10

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中