zzzzz

最新記事

弾劾裁判

トランプ弾劾裁判、「反乱扇動罪」で問われているものは何か

Why Inciting an Insurrection Isn't Considered Treason, Even if Found Guilty

2021年2月9日(火)18時46分
ジェニー・フィンク

バッファロー大学のジム・ガードナー教授(法学)は本誌に対して、次のように指摘した。「弾劾訴追は権力の乱用を根拠とした政治的な手続きだ。下院が反乱や反逆について、法律上の定義を満たす証拠を持っているかどうかは、まったく重要ではない」

合衆国憲法の下、下院には大統領を弾劾訴追する権限があり、上院には「反逆罪、収賄罪、その他の重罪や軽罪」で有罪評決を下す権限がある。ボーマンは、トランプが弾劾対象になり得る行為に関与したことは明らかだが、反逆罪は犯しておらず、収賄罪も適用の対象外であるため、下院による弾劾訴追は、反乱の扇動を根拠にトランプを「重罪および軽罪」に問うものだと指摘した。

重罪と軽罪は反逆罪よりも「広範な概念」であり、議員たちは扇動罪に重点を置く方がより「柔軟な」対応ができると考えたのかもしれないとモーリーは言う。

トランプの弾劾裁判は2月9日に始まる予定で、有罪評決には上院議員67人の支持を獲得する必要がある。トランプを擁護する者たちは、トランプは法律上の犯罪を犯してはいないと主張し、そのほかの者たちは、それがなくとも弾劾の対象にはなると主張するだろう。

「権力の乱用」こそが焦点

連邦議会のウェブサイトに掲載されている注釈付きの合衆国憲法には、「本憲法が承認された時点で、重罪および軽罪とは、公職に就く者が国家に対して犯した政治的な罪または不正行為に対して適用されるものという理解だ」と記されている。

アメリカの初代財務長官であるアレクサンダー・ハミルトンは(合衆国憲法の意義を訴える論説)「フェデラリスト・ペーパーズ」第65篇の中で、弾劾対象となる罪とは「公職に就く者による不正行為、つまり権力の乱用や国民の信頼を裏切る行為を指す」と説明している。

ガードナーは、弾劾裁判において法律上の犯罪行為の有無は重要ではないものの、検察官役を務める下院議員たちは、トランプによる法律違反の証明を試みる可能性があると指摘した。トランプの弁護団がそれを重要な論点にしようとしているからだ。

「議員たちに助言をするなら、こう言うだろう。あなた方が適用すべき基準は、弾劾訴追された人物が合衆国憲法に違反する方法で権力を乱用したか否かであり、問題はその一点に尽きるのだと」

20240604issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年6月4日号(5月28日発売)は「イラン大統領墜落死の衝撃」特集。強硬派ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える グレン・カール(元CIA工作員)

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:アルゼンチン止まらぬ物価高、隣国の町もゴ

ビジネス

アングル:肥満症薬に熱視線、30年代初頭までに世界

ワールド

イスラエル、新休戦案を提示 米大統領が発表 ハマス

ビジネス

米国株式市場=ダウ急反発、574ドル高 インフレ指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    ロシアT-90戦車を大破させたウクライナ軍ドローン「精密」特攻...戦車の「弱点」を正確に撃破

  • 3

    ヘンリー王子とメーガン妃の「ナイジェリア旅行」...痛すぎる教訓とは?

  • 4

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 5

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 6

    米女性の「日焼け」の形に、米ネットユーザーが大騒…

  • 7

    ウクライナ「水上ドローン」が、ロシア黒海艦隊の「…

  • 8

    1日のうち「立つ」と「座る」どっちが多いと健康的?…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    「同性婚を認めると結婚制度が壊れる」は嘘、なんと…

  • 1

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 2

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 3

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 4

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 5

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 6

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 7

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 8

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中