最新記事

米政治

「再選を阻止せよ」浜田宏一・安倍政権元内閣参与がトランプに三行半

PREVENTING “TRUMP 2024”

2021年1月15日(金)17時20分
浜田宏一(元内閣官房参与、エール大学名誉教授)

「トランプより優秀」ともいわれるイバンカが次の大統領選に? BRIAN SNYDER-REUTERS

<トランプの今までの常套手段は、単なるでっち上げや脅しだ――。進歩に対する抵抗を克服し、2024年のトランプ再当選を防ぐために必要なこととは>

(本誌「トランプは終わらない」特集より)

昨年11月のアメリカ大統領選勝利演説でジョー・バイデン次期大統領は、党派を超えて共和党員と協力し国論を統一すると約束した。

それから2カ月後、ドナルド・トランプ大統領は退陣を認めず、支持する共和党議員の一部は先週、選挙人投票の集計に反対する手はずになっていた。その後に連邦議会議事堂を占拠した暴徒の振る舞いは、世界に報道された。

一連の出来事はアメリカがいかに二極化しているかを示している。世論の亀裂がアメリカの民主主義に空前絶後の脅威をもたらしているのである。
20210119issue_cover200.jpg
大統領選以来、トランプと彼の共和党の同志らは、選挙結果に異議を唱えて60以上の訴訟を起こしてきた。しかし、トランプが保守派の判事で埋めた最高裁でさえ、判決でトランプを見放した。

それにもかかわらず、トランプ支持者たちがトランプの主張を援護し、それがまた有権者にいまだに支持されていることは、アメリカ社会に深刻な疑問を投げ掛けている。

今日のアメリカの二極化は、どの税制が国民や経済にとって最も望ましいか、といった具体的な政策の相違によって引き起こされているのではない。このような議論は民主主義政治の生命線である。

しかし、あるべき具体的論争は、「現実」をめぐる論争の陰に隠れてしまっている。そのためにアメリカ社会は大きな傷を負っている。

新型コロナウイルスのケースを考えてみよう。トランプは最初からコロナウイルスなど大したことはないと主張し続けた。さらに、彼は医学で実証されていない治療法を繰り返し支持して、マスク着用のように実証済みの予防法を拒んできた。その結果36万人以上のアメリカ人がコロナウイルスで死亡している。

しかし、嘘の政治がいまだにうまく通用している。トランプ支持者の多くはこれまで同様、彼に忠実だ。

11月に実に7400万人以上のアメリカ人がトランプに投票した(バイデンは8100万人だった)。そしてトランプの同志たちは選挙不正の証拠が何もないにもかかわらず、彼の言うことを信じる。共和党員の4分の1しか大統領選の投票結果を信頼していない。

トランプ家以外のトランプ

しかしトランプの過去を考えると、これは特に驚くべきことではない。ロバート・ムラー特別検察官による2016年大統領選でのロシアの干渉に関する捜査について、トランプは「自分は完全に無罪になった」と開き直った。また、水資源保護のためのトイレの水量規制のせいで「アメリカ人はトイレを10~15回も流す」と、主張したりもする。

彼の今までの常套手段は、単なるでっち上げや脅しだ。共和党員は彼の嘘に喜んで共鳴し、保守メディアはそれを増幅させてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、年内利下げ開始適切 インフレ低下の兆し=ク

ビジネス

エヌビディア時価総額3.336兆ドル、世界トップ 

ビジネス

米セントルイス連銀新総裁、利下げに慎重 「インフレ

ビジネス

米鉱工業生産、5月製造業は0.9%上昇 予想上回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:サウジの矜持
特集:サウジの矜持
2024年6月25日号(6/18発売)

脱石油を目指す中東の雄サウジアラビア。米中ロを手玉に取る王国が描く「次の世界」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 2

    新型コロナ変異株「フラート」が感染拡大中...今夏は「爆発と強さ」に要警戒

  • 3

    えぐれた滑走路に見る、ロシア空軍基地の被害規模...ウクライナがドローン「少なくとも70機」で集中攻撃【衛星画像】

  • 4

    800年の眠りから覚めた火山噴火のすさまじい映像──ア…

  • 5

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 6

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…

  • 7

    ルイ王子の「くねくねダンス」にシャーロット王女が…

  • 8

    中国「浮かぶ原子炉」が南シナ海で波紋を呼ぶ...中国…

  • 9

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…

  • 10

    中国不動産投資は「さらに落ち込む」...前年比10.1%…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    新型コロナ変異株「フラート」が感染拡大中...今夏は「爆発と強さ」に要警戒

  • 4

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 5

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…

  • 8

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 9

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…

  • 10

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 8

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 9

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 10

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中