最新記事

韓国社会

韓国、「正義」のユーチューバーらが暴走 児童性犯罪者の出所トラブルで周辺住民は恐怖の日々

2020年12月23日(水)20時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

出所した凶悪犯罪者を待ち受けていたのは野次馬やユーチューバーらだった Yonhapnews / YouTube

<凶悪な犯罪者が帰ってくる。だが実際に起きたのはそれだけではなかった──>

スマートフォンというツールによって、1人1メディア時代と言われるようになり、誰もが世界に向けて発信できるようになった。以前は、事故現場からの生中継などプロのTVクルーにしかできなかったが、今は誰でも決定的瞬間をスマホで撮影可能だ。

手軽にできるようになりよい面もある一方、そのたやすさに乗っかりエスカレートしてしまうと、一気に暴走をすることもある。しかも、それが「悪人を罰する」と正義を振りかざしている場合、果たしてそれは本当の正義なのか、一度立ち止まって考え直す必要がある。

今月12日、韓国ソウル近郊のアンサン市ではそんな人々が大勢押し寄せ騒動となった。ことの発端は、チョ・ドゥスンという一人の犯罪者の出所だった。

凶悪犯罪でも心神耗弱として減刑

チョ・ドゥスンは、2008年12月11日京畿道アンサン市にて、当時小学校1年生の少女に性的虐待を行い逮捕された。少女は顔面骨折と怪我、さらに局部の80%を破損するなど一生治ることの無い重傷を負ったが、犯行時、チョ・ドゥスンは酒に酔っていたため心神耗弱状態と判断され、懲役12年の刑が言い渡された。

チョ・ドゥスンの逮捕は社会的議論を呼び、これを契機として韓国では、性暴力に対する法案が次々と発議された。

2010年7月には「性暴行犯罪者の性衝動薬物治療に関する法律」が施行され、これにより、児童への性暴行犯罪者のうち、性衝動をコントロールできないと判断された19歳以上の成人犯罪者には性的衝動抑制のための薬物治療、つまり化学的去勢が施行されるようになった。

また、2011年10月からは、未成年者に対する性暴行犯罪の公訴時効が、被害未成年者が成年に達した日から起算されるようにも変更されている。

さらに、前科もあり強姦歴まであったチョ・ドゥスンが、たった12年の刑期を言い渡された理由の一つである「心神耗弱」も大きな問題となった。犯行当時、飲酒により判断能力が低下していたことから、韓国刑法10条2項「酒酔減軽」が適用され懲役12年になった。

これについて多くの韓国民は怒りをあらわにし、2018年には法改正によって「心神耗弱」減刑義務が廃止された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

多数犠牲のラファ攻撃、イスラエルへの軍事支援に影響

ビジネス

温暖化は米経済に長期打撃、資本ストックや消費押し下

ワールド

仏独首脳、ウクライナにロシア領内攻撃容認を 一部施

ワールド

チェコ主導のウクライナ砲弾供給計画、16億ユーロ調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    メキシコに巨大な「緑の渦」が出現、その正体は?

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏…

  • 6

    プーチンの天然ガス戦略が裏目で売り先が枯渇! 欧…

  • 7

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 8

    なぜ「クアッド」はグダグダになってしまったのか?

  • 9

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 10

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 7

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 8

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中