最新記事

2020米大統領選

さらにエスカレートするトランプの「コロナ詐欺」

'Where's the Vaccine?' Doctors Blast Trump's Election Day COVID Promises

2020年11月2日(月)18時16分
ベンジャミン・フィアナウ

新型コロナウイルス感染により一時入院したトランプは退院した10月5日、ワクチンについてこう述べた。「選挙の前には入手できるべきだと思う。だが実のところ、政治が介入してごまかそうとしている。(それでも)選挙後すぐに出るだろう」

感染症の専門家でCDCの元所長であるトーマス・フリーデンは、ワクチンがすぐ手に入るかのような発言をトランプが続けていることを強く批判。故意に嘘の情報を流せば恐ろしいことになると警告した。

「コロナを止められるものが1つある。私はこれまで何カ月もそんなものはないと言ってきたが、1つだけある。それはマスクではない。移動制限でもない。ステイホームでもないし検査でもない。追跡調査でも人との接触を避けることでも隔離でもない。ワクチンですらない。それは信頼だ」とフリーデンはツイッターで述べた。

トランプ政権が元スタンフォード大学医療センター神経放射線学部長であるスコット・アトラスをコロナ対策のアドバイザーとして迎えた時は、十分な専門知識がないとしてフリーデンら世界中の多くの医師の批判の的となった。アトラスは感染拡大を深刻に捉えるメディアを「ヒステリー」と非難。また、ワクチンの実用化には時間がかかるというファウチの発言に異議を唱え、「自然な集団免疫」を目指すべきだと主張した。

FDAが臨床試験を妨害?

CDCは11月15日までにワクチン接種が可能な態勢を各州が整えるよう求めているが、それまでにワクチンが接種可能になるというのは希望的観測に過ぎないとの声も聞かれる。米公共放送NPRは31日、ワクチンの緊急使用を認めるかどうかはFDA次第だが、そもそも臨床試験の最終段階にあるアメリカの4社のうち申請したところは1社もないと伝えている。

「FDAはディープステートか誰かの差し金で、製薬会社がワクチンや治療薬の試験のための人集めを妨害している。連中は明らかに、(臨床試験の)結果を遅らせて11月3日より先にしようとしているのだ。スピードと命を救うことに注力しなければならないのに!」とトランプは8月22日、ツイートした。

その実、トランプがコロナ対策としてやったことといえば「ワクチン詐欺」と新型コロナを過小評価することぐらい。ついにアメリカでは30日、新たに確認された感染者数が9万9321人となり、1日あたりの新規感染者数としては世界最多となった。これまでの最多記録は9月17日のインド(9万7894人)だった。10月に入りアメリカでは30州で1日あたりの新規感染者数の過去最多を記録していたが、30日にはアイオワ州も加わって31州となった。

20240514issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月14日号(5月8日発売)は「岸田のホンネ」特集。金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口……岸田文雄首相が本誌単独取材で語った「転換点の日本」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国高級EVのジーカー、米上場初日は約35%急騰

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー

ワールド

焦点:中国農村住民の過酷な老後、わずかな年金で死ぬ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの文化」をジョージア人と分かち合った日

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 6

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 7

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 8

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中