最新記事

ドイツ

ドイツも過去最大の新感染者数 マスク着用促す広告は過激すぎて撤去

2020年10月19日(月)18時00分
モーゲンスタン陽子

「マスクをしないすべての人に指を立てよう」という広告は、すぐ撤去された...... twitter

<フランスなどと同様、ドイツでも連日、1日の新感染者数の記録を更新している。マスク着用義務も厳しくなり、混乱も招いている......>

ヨーロッパ全体で感染が爆発的に増えている今も、マスク着用義務などの規制に反対するデモはあとをたたない。感染者の増加がおもに若年層であるため致死率はそれほど高くなく、また今春の第1波のときと違って社会が元どおりとはいかないが動いてはいるため、全体にまだ危機感が広まっていない気配だ。また、全体的ロックダウンを回避するために政府が部分的・段階的な制約を導入していることが、市民の混乱を招いてもいるようだ。

ベルリンでは反マスク主義者への鬱憤も

ベルリンでは観光当局が13日、「マスクをしないすべての人に指を立てよう」という広告を地元紙に打つと、瞬く間に議論が巻き起こった。ベルリンらしいといえばベルリンらしいが、あまりにも攻撃的で侮辱的だと、一部で非難の声が上がり、撤回された。

ベルリンでは夏から反マスク主義者や陰謀主義者の大規模なデモが続き、ルールを守っている市民の鬱憤もたまっていたようだ。観光当局のヴィジット・ベルリンは、高齢者や重症化するリスクの高い人々の健康を守ることの重要性を呼びかける狙いだったというが、中には健康上の理由でマスクを着用できない人もいる。一方的に非難する姿勢が反感を呼んだのかもしれない。

過去最大の新感染者数

フランスなどと同様、ドイツでも連日、1日の新感染者数の記録を更新している。過去最高は3月28日の6294人だったが、17日土曜日には7830人に達した。春よりも検査数が格段に増えているというのもあるが、やはり心配な数だ。17日の会見でメルケル首相は、ドイツはこれから非常に深刻な段階に突入するとし、不要不急の旅行や外出、集会を極力避け、家にいるよう市民に団結を呼びかけた。

首相と16州の知事は先週、さらに厳格な各種規制の導入に合意している。これにより、7日間で10万人あたり50 人の新感染者が出た地域を「ホットスポット」とし、ホットスポット認定された地域では、たとえば集会は10人あるいは2世帯まで、あるいは飲食店の営業は午後11時まで、などの制約が課されるようになる。

また、マスク着用義務も厳しくなり、10万人あたり35人以上の感染がある場合は公共エリアすべてにおいての着用が義務化、ホットスポットではこれがさらに厳しくなる。

現在ホットスポットとされているのはおもにベルリンやフランクフルトなどの都市部だ。これらホットスポットからの旅行者の受け入れを制限する動きが全国で出ているが、方針や条件が自治体によってまちまちなので、市民にはわかりづらい。たとえば、ホットスポットからそうではない地域へ移動しなければならない場合、移動先でホテルの滞在が許可されていなければ日帰りか、あるいは許可されている地域を経由して一泊するしかない。この点については16州で合意に達することができなかったため、11月8日まで決定が延期されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国人民銀、1年物MLF金利据え置き 差し引き供給

ビジネス

今年のジャクソンホール、金融政策伝達がテーマ=カン

ワールド

トランプ氏不倫口止め裁判で元腹心証言、弁護団は信頼

ビジネス

インフレなお高水準、まだやることある=カンザスシテ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中