最新記事

コロナ禍の社会

コロナ対策で移動手段は公共交通機関から自転車へシフト

2020年5月12日(火)17時45分
松丸さとみ

外出規制が緩和されて人が移動を始めた場合の公共交通機関のあり方について、懸念を示す声は多い。ロンドンのサディク・カーン市長は6日、市内の公共交通機関で対人距離を確保した場合、かつての規模で人の輸送を実現することはできない、と自身のFacebookに投稿した。

また同市長は公式ウェブサイトで、市内の公共交通機関の輸送力はコロナ危機前と比べわずか20%になる見込みであるため、市民には公共交通機関以外の手段で移動してもらう必要があると説明した。そのためロンドンでは、仮設資材を活用するなどして自転車レーンを早急に敷設したり、繁華街の歩道を拡充したりするなど、道路インフラを刷新する計画を立てている。

ロンドン交通局は、これらが実現した場合、コロナ危機前と比べ、自転車の利用者は10倍、徒歩は5倍に達すると予測しているという。

自転車の黄金期到来?

9日の記者説明会でシャップス運輸相は、交通機関の運行が通常通りに戻ったとしても、2メートルの対人距離を確保した場合、国内の公共交通網の多くで、コロナ危機前と比べて10%の輸送力しか保てないと述べた。

前述した20億ポンドの計画は、こうした問題を解決するためだ。シャップス運輸相は、自転車での移動を英国の交通政策の中心とし、国内の交通網を自転車通勤や徒歩通勤に備えるとした。

計画の詳細は6月上旬に発表されるとのことだが、まずは第一弾として、2億5000万ポンド(約332億円)をかけて、「ポップアップ自転車レーン」(自動車レーンを一時的に自転車用に変えたもの)や歩行者レーンを作り、自転車や歩行者の安全を確保するという。

シャップス運輸相はさらに、心身の健康を促進するという視点からも自転車や徒歩での移動には利点があるとし、国民保健サービス(NHS)への負担も軽減されると説明。また、自転車や徒歩で移動することにより、買い物をする人や飲食店に立ち寄る人が増えるため、小売店や経済全体にも利点があるとの見方を示した。

ボリス首相は6日の首相答弁で、公共交通機関以外の交通手段に向けてさまざまな施策が計画されていることについて、「サイクリングにとって新たな黄金期の到来となるはずだ」と、自転車愛好家らしい言葉で表現した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

多数犠牲のラファ攻撃、イスラエルへの軍事支援に影響

ビジネス

温暖化は米経済に長期打撃、資本ストックや消費押し下

ワールド

仏独首脳、ウクライナにロシア領内攻撃容認を 一部施

ワールド

チェコ主導のウクライナ砲弾供給計画、16億ユーロ調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    メキシコに巨大な「緑の渦」が出現、その正体は?

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏…

  • 6

    プーチンの天然ガス戦略が裏目で売り先が枯渇! 欧…

  • 7

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 8

    なぜ「クアッド」はグダグダになってしまったのか?

  • 9

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 10

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 7

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 8

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中