最新記事

感染症

ロシアの新型コロナウイルス死亡率0.9%に疑惑 検視で6割が他の死因とモスクワ市は不正否定

2020年5月14日(木)15時37分

ロシアの首都モスクワ市の当局は13日、4月に市内で死亡した新型コロナ感染者のうち、6割以上の死因を新型コロナ以外として統計上処理したと明らかにした。写真はサンクトペテルブルク郊外の埋葬地。13日撮影(2020年 ロイター/Anton Vaganov)

ロシアの首都モスクワ市の当局は13日、4月に市内で死亡した新型コロナ感染者のうち、6割以上の死因を新型コロナ以外として統計上処理したと明らかにした。当局は、検視によって「極めて正確」に死因の特定をしたとし、統計の不正を否定した。

ロシアの新型コロナ感染者の累計は24万2271人と、米国に次いで世界で2番目に多い国となったが、死者数は2212人と、死亡率は世界で最も低い部類に属する。このうち、感染拡大が最も深刻なモスクワの死者数は1232人。ロシア政府は大規模な検査体制を感染者増加の理由に挙げている。

死亡率が低いことについては、死亡統計が正しくないとの懐疑的な見方が欧米などのメディアで取り沙汰されている。前週末に公表されたモスクワの4月の死亡統計で死者数が前年同月から急増したため、疑念はさらに強まった。

モスクワ市保健局は13日の声明で、4月の死者数(1万1846人)は前年同月より1841人多く、増加数は新型コロナウイルス感染症による死者数のほぼ3倍だったと認めた。しかし、新型コロナ死者数の過少報告の疑惑はきっぱりと否定した。

ロシアのゴリコバ保健相も統計の不正を否定。

モスクワ市保健局は、他の多くの国々とは異なり、ロシア政府とモスクワの当局は新型コロナが主な死因である疑いがある遺体全ての検視を実施したと説明、「それ故、モスクワでの検視と死因特定は極めて正確で、死亡統計は完全に透明だ」と強調。

死亡した新型コロナ感染者の6割強は、心臓発作やステージ4の悪性腫瘍など、新型コロナ以外の原因で死亡したのが明白だったとした。新型コロナ感染症が直接の原因だった4月のモスクワの死者は639人だったという。

[モスクワ ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・緩むとこうなる?制限緩和を試みた韓国にコロナのしっぺ返し
・東京都、新型コロナウイルス新規感染10人 3月下旬以来の少なさ
・WHO、複数の新型コロナウイルス治療薬に注目 ワクチン開発は難航と予測
・韓国・梨泰院のクラスター、新型コロナ感染102名に ゲイの濃厚接触者の追跡がネックに



20050519issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月19日号(5月12日発売)は「リモートワークの理想と現実」特集。快適性・安全性・効率性を高める方法は? 新型コロナで実現した「理想の働き方」はこのまま一気に普及するのか? 在宅勤務「先進国」アメリカからの最新報告。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中