最新記事

新型コロナウイルス

世界のハブ空港で手洗いする人が増えるだけで、パンデミックリスクが軽減できる:シミュレーション結果

2020年2月14日(金)17時30分
松岡由希子

ハブ空港10カ所で手洗いする人が増えるだけで..... FangXiaNuo-iStock

<米マサチューセッツ工科大学の研究チームは、多くの旅行者が空港で手洗いをすることで、パンデミックのリスクを24%から69%抑制できる、との結果を導き出した>

手洗いは、咳やくしゃみからの飛沫を通じて広がるウイルス感染の予防において最も基本的な手段だ。世界保健機関(WHO)、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)、厚生労働省はいずれも、世界各地で感染が広がっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への予防策として、石鹸やアルコール消毒液などによる手洗いを強く励行している。

「全体の約3割がトイレの後に手洗いをしていない」

世界各地から移動してくる多くの人々で絶え間なく混雑する国際空港においても、手洗いが伝染病拡大防止に役立つ。

しかしながら、米ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港など、北米7都市の国際空港内の公衆トイレで2003年に実施した調査では「全体の約3割がトイレの後に手洗いをしていない」との結果が示されている。

米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、疫学的モデルとコンピュータのひとつ「モンテカルロシミュレーション」を用いて、人の移動に伴う世界的な伝染病の伝播と個人の空港内での手洗いとの関連について解明し、「より多くの旅行者が空港で手洗いをすることで、パンデミック(大流行)のリスクを24%から69%抑制できる」との結果を導き出した。一連の研究成果は、2019年12月23日、学術雑誌「リスク・アナリシス」で公開されている。

世界的なハブ空港10カ所で手洗いする人が増えるだけで......

このシミュレーション結果によると、常に手を清潔な状態に保っている人は、空港利用客全体の20%程度にとどまる。世界のすべての空港において、この割合を30%に引き上げることができれば、伝染病が世界的にもたらす影響を24%軽減でき、60%にまで向上させれば、これを69%抑制できる。

studytoslowa.jpg


また、ジョン・F・ケネディ空港のほか、英ロンドン・ヒースロー空港、北京首都国際空港など、伝染病の感染拡大の起点となりやすい世界的なハブ空港10カ所で手洗いする人が増えるだけでも、パンデミックのリスクを37%軽減できるという。

研究論文では、このようなシミュレーション結果をふまえ、「一人ひとりが手の衛生管理を適切に実践することこそ、伝染病の感染予防と世界的なパンデミックリスクの軽減のためのシンプルかつ効果的な対策である」と結論づけている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米金融当局、銀行規制強化案を再考 資本上積み半減も

ワールド

北朝鮮、核抑止態勢向上へ 米の臨界前核実験受け=K

ワールド

イラン大統領と外相搭乗のヘリが山中で不時着、安否不

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中