最新記事

情報セキュリティー

モサド元長官が日本人へ語る「組織を率いる心得」

2020年2月7日(金)18時00分
山田敏弘(国際ジャーナリスト)

そうストレートに問うと、パルドは笑って、「凄腕かどうか、自分たちで評価することはしたくない」と答えた。「私たちは、有能な人たちであり、私たちの機関も、有能な機関なのだ。ただ他の機関を評価することもしないし、他の人たちから評価されたくもない。ただし、モサドが優れているのは間違いない」

そんな組織を率いてきたパルドにとって、「リーダーの心得」とはどういうものなのか。

解決策を見つけるには?

モサドでは、組織に自分たちの置かれた立場をはっきりと認識させ、それを徹底している。パルドはモサドの場合、「強くなる以外、私たちには選択肢がなかった。それに尽きる」という。その考えを共有し、組織を動かしていく。そして組織に、アイデアを捻り出すよう求める。

「壁際に追い詰められ、何らかの対処をしなければならない。そういう状況下では、クリエーティブになって、解決策を見つける必要がある。例えば、サイバー攻撃は、そうした状況に対応するのに、まさに優れたツールだと言える」

つまり、組織には問題がつきものであり、リーダーはそうした課題に対して組織にクリエーティブに考えるよう促す。

では、パルドにとって優れたリーダーとはどういう人なのか。

「自分自身を評価するようなことはしたくないが、優れたリーダーとはこうだ。他のどんな組織も同じかもしれないが、モサドのような組織を取り仕切るのは、100個のスタートアップ企業を毎日運営しているようなものだ。多くの問題に対処し、すぐに解決策を出さなければいけない。そのためには、常にリラックスしている必要があるし、謙虚であるべきだ」

さらにこう付け加える。「地球が自分中心に回っているのではないことを理解すべきだ。他にも人がいて、一緒に働く人たちがもつ経験を生かす準備ができていなければならない。チームとして、大きなチームとして働いていることを理解しなければいけない。正しい時に正しい解決策を、ともに導き出さなければならない」

こうした自覚を持てる人が、リーダーの条件であるとパルドは主張した。「何年もモサド長官の職にあり、仕事で数多くの経験をした。みんなの経験をひとつにできれば、ベストと言えるシステムが出来上がるのだ」

拙著『世界のスパイに食い物にされる日本』ではこの他、CIA(米中央情報局)やMI6(秘密情報部)など世界の凄腕諜報機関の中で翻弄される日本の現状についても記している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国太陽光パネルメーカー、価格急落で政府に介入求め

ビジネス

米アップル、時価総額が一時マイクロソフト超え首位 

ワールド

ヒズボラ、イスラエルに最多のロケット弾 幹部殺害で

ワールド

ガザ住民の多数が「飢餓のような状況」に=WHO事務
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 2

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「勝手にやせていく体」をつくる方法

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    長距離ドローンがロシア奥深くに「退避」していたSU-…

  • 5

    謎のステルス増税「森林税」がやっぱり道理に合わな…

  • 6

    【衛星画像】北朝鮮が非武装地帯沿いの森林を切り開…

  • 7

    バイデン放蕩息子の「ウクライナ」「麻薬」「脱税」…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 9

    たった1日10分の筋トレが人生を変える...大人になっ…

  • 10

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 1

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 2

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...? 史上最強の抗酸化物質を多く含むあの魚

  • 3

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 4

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 5

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 6

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 10

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 10

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中