最新記事

中国経済

中国政府に「脱香港」の動き? 深圳を「香港以上」に育てる長期計画

2019年8月27日(火)06時20分
エレノア・アルバート

香港を上回る勢いで成長を続ける深圳 BINGFENGWU/iSTOCKPHOTO

<中国が発表した深圳の大規模開発構想は、反政府デモに揺れる香港への牽制か>

中国国務院と共産党中央委員会が8月半ばに深圳の野心的な大改造計画を発表した。

周知のとおり、広東省にある深圳は今でも中国南東部の主要都市であり、香港と大陸中国の重要な結節点だ。しかし新計画によれば、深圳は「中国の特色ある社会主義」の成果を誇示するパイロット地区に生まれ変わる。つまり経済力や発展の質において世界をリードする都市となり、とりわけ研究開発や技術革新、新興産業の育成、環境保護にも注力するという。

新計画は、いずれも特別行政区である香港、マカオと広東省の9都市を一体化する「大湾区(粤港澳大湾区)」開発構想の一環と位置付けられる。現状でもこの地域だけで中国のGDPの約12%を生み出しており、総人口は7000万に達する。

大湾区構想はまだ概要が示されているだけだが、要は珠江デルタ地帯に巨大な産業のハブを創出し、経済成長や改革の発信地とするとともに、「一国二制度」の実践をさらに推し進めるものだという。後者の意味するところは不明だが、送電や通信を含むインフラ部門の相互接続性向上や「一帯一路」計画への積極的な参画、近代的産業システムの構築などの課題が挙げられている。

また大湾区は「香港やマカオの同胞が本土の人民と、国家再生の歴史的責任と強大にして豊かな祖国の誇りを共有することを可能にする」との記述もある。おそらく、大陸こそ中国の核心であることを強調し、香港と大陸側諸都市の間にある権限や影響力の違いを解消していくという中央政府の強い意思を示唆するものだろう。

経済的な力関係が逆転

人口1200万を超える深圳は中国で最初の経済特区だ。アメリカが目の敵とするファーウェイ(華為技術)もここに本社を置く。またコンテナ港としての規模・取扱量では世界第3位で、国際的な金融センターとしても14位にランクされる(香港は現状で第3位)。

昨年には経済規模で初めて香港を抜いた(深圳は2兆8700億香港ドル、香港は2兆8500億香港ドルだった)。成長力の差も歴然としており、域内総生産の伸び率は深圳の7.6%に対して、香港は3%にすぎない。ちなみに香港政府によれば、大規模デモで混乱の続く今年の成長率は1〜0%に落ち込むものと予測される。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中