最新記事

東南アジア

インドネシア首都移転先、発表1日で活断層や森林火災など問題続出 政府内からも疑問の声

2019年8月27日(火)18時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、同国の首都をカリマンタン島・東カリマンタン州のパンジャム・パサール・ウタラ地方北部とクタイ・カルタヌガラ地方の一部で構成する地域に移転すると発表した。写真はスモッグに覆われたジャカルタ市内(Antara Foto Agency/REUTERS)

<2期目に入った大統領が突然スケジュールを発表した首都移転。当初明かされなかった具体的な移転先が公表されたが──>

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は26日、首都ジャカルタの大統領官邸で記者会見し、首都移転問題で先にカリマンタン島とだけ明らかにしていた移転先に関して具体的な候補地の地名を挙げ、関係者の協力と理解を求めた。

それによると、カリマンタン島東カリマンタン州北ブナジャム・パセル県とクタイ・カルタヌガラ県にまたがる地域を新たな首都として2021年から建設に着手して、2024年に政府一部機能や議会の移転を開始したいとしている。

そして完全な首都移転はインドネシア独立100年となる2045年を目指すという。

首都移転問題は初代スカルノ大統領、長期独裁政権を維持したスハルト大統領、スシロ・バンバン・ヨドヨノ前大統領などがいずれも構想を明らかにしたものの実現していない経緯がある。

ジョコ・ウィドド政権では2019年4月に国家開発企画庁が首都移転構想を明らかにし、ジョコ・ウィドド大統領もカリマンタン島を主要候補地として何度か現地視察を繰り返した。

そして8月16日に議会で行った施政方針演説に当たる「国家演説」の中で具体的な地名を示さずに「首都をカリマンタン島に移転したい」との方針を示し、関係者の承認と協力を呼びかけたばかりだった。

用地買収や予算措置が不透明

ジョコ・ウィドド大統領は新首都移転候補地には約18万ヘクタールの政府所有の国有地があることから「用地収用は大きな問題ではない」として、候補地選定を見越して周辺地域ですでに進む地価高騰や土地の買い占めなどには影響を受けないとしている。

肝心の首都移転に関わる経費については「総額466兆ルピア(約3兆7000億円、2019年度国家予算比で約19%)」という巨額になると試算されている。政府はこのうち19%を国家予算から支出し、残りを民間企業の投資や官民連携の資金活用で賄うことを計画としているという。しかし、国家予算にしても財源が不明確で民間からの投資も具体的な方法、金額は依然不明という状況である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:メダリストも導入、広がる糖尿病用血糖モニ

ビジネス

アングル:中国で安売り店が躍進、近づく「日本型デフ

ビジネス

NY外為市場=ユーロ/ドル、週間で2カ月ぶり大幅安

ワールド

仏大統領「深刻な局面」と警告、総選挙で極右勝利なら
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「珍しい」とされる理由

  • 2

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆発...死者60人以上の攻撃「映像」ウクライナ公開

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    メーガン妃「ご愛用ブランド」がイギリス王室で愛さ…

  • 5

    米モデル、娘との水着ツーショット写真が「性的すぎ…

  • 6

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 7

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    「ノーベル文学賞らしい要素」ゼロ...「短編小説の女…

  • 10

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 5

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 6

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 9

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中