最新記事

ネット

2人の銃乱射事件犯が、同じ掲示板サイトに声明文を書き込んでいて問題に

2019年8月7日(水)16時30分
佐藤由紀子

テキサス州の銃乱射事件犯は匿名掲示板に声明文を書き込んでいた Inside Edition-YouTube

<テキサス州であった銃乱射事件の犯人や、クライストチャーチのモスクで銃乱射事件を起こした犯人が、同じ匿名掲示板サイトに犯行マニフェストを書き込んでいて問題になっている......>

「インターネットが精神の荒廃を増幅している」とトランプ大統領

米テキサス州エルパソのショッピングモールで8月3日、銃乱射事件が発生し、地元警察の発表によると、少なくとも20人が死亡し26人が負傷した。

この事件についてドナルド・トランプ米大統領は5日、容疑者が犯行直前にインターネットに「マニフェスト」を投稿したことに言及し、「インターネットが精神の荒廃を増幅し、狂った行為に走る手段を提供していることを認めなければならない」と語った。

このマニフェストには、「ヒスパニックは私の愛するテキサスを支配するだろう。彼らはテキサスを政治的クーデターの道具にするだろう」「移民はアメリカの未来にとって有害でしかない」などと書かれており、「私は我が国を破壊から取り戻すための戦いに臨むことを光栄に思う」と締めくくられている。

過激な移民政策や人種差別的発言を繰り返すトランプにこそ、この問題の責任があると非難する向きもあるが、トランプの発言であらためて偏った思考を増幅させるインターネット掲示板に注目が集まっている。

匿名掲示板サイト「8chan」に犯行マニフェストを投稿

容疑者がマニフェストを投稿したのは「8chan」という匿名掲示板サービスで、今年の3月、ニュージーランドのクライストチャーチのモスクで49人を銃殺した犯人であるブレントン・タラント(28)も、この掲示板にマニフェストを投稿していた。

エルパソ事件の容疑者であるパトリック・クルシウス(21)は8chanでの他の投稿で、クライストチャーチの事件を支持する発言もしている。

調査ジャーナリズムサイトのBellingcatは、8chanではクライストチャーチ事件後、タラントが作った殺人記録を超えたいという書き込みが定期的にあると指摘した。Bellingcatは、「8chanは、大量殺人のゲーム化をテロリズムにもたらした」としている。

8chanは、利用規約が厳しくない(合衆国憲法を順守していればどんなコンテンツ投稿も可)こともあり、極右のオルト・ライトや白人至上主義の発言の場になっている。

たとえ8chanがなくなっても......

CDN(さまざまなネットワークサービス)を提供していたCloudflareが5日に8chanへのサービスを打ち切った後、8chanはオフラインになっている。Cloudflareはサービス停止に当たり、「エルパソ事件の容疑者はクライストチャーチ事件に言及しており、あの大虐殺を賛美した8chanの議論に触発されたと考えられる。8chanは繰り返し、憎しみの中心地であることを証明した」と説明した。

だが、8chanは公式Twitterアカウントで「ソリューションをみつけるまでの1、2日はオフラインになる」とツイートしており、新たなCDNやドメインサービスと契約して復活するつもりのようだ。

たとえ8chanがなくなっても、潜在的なニーズがある限り、似たようなサービスの発生を阻止するのは難しい。

トランプは対策の1つとして、「政府機関とソーシャルメディア企業との提携により、大量虐殺者を攻撃前に検出するツールを開発している」と説明した。実現するかどうかは分からないが、次の攻撃者を温存するコミュニティを根絶することが難しい以上、比較的有効な対策なのかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

フィリピン第1四半期GDP、前年比+5.7%で予想

ビジネス

景気動向一致指数、3月は前月比2.4ポイント改善 

ワールド

再送-ブラジル南部洪水の死者100人に、さらなる雨

ワールド

印ヒーロー・モトコープ、1─3月期は18.3%増益
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中