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元マイクロソフトのスティーブ・バルマーが、NBAオーナーとしておおはしゃぎ

2019年7月31日(水)18時40分
坂和敏

「ここぞ」という時の思い切りの良さが幸運を呼んでいる

記者会見でマイクの前に立ったバルマーが、MS時代を彷彿とさせる高いテンションでまくし立てている背景にはそんな事情があるのだ。

2人のスーパースターとコーチ陣が、バルマーのテンションの高さに呆気にとられているのは面白い。きっとNBA関係者のなかには、例の「デベロッパー、デベロッパー」を連呼するかつてのバルマーの姿を目にしたことのある人がそれほどいないのだろう。

バルマーがマイクロソフトを離れたのが2014年の2月、そしてその年の初夏にLACでオーナーの人種差別スキャンダルが持ち上がり、棚ぼたのような形でバルマーが同球団を手中にしたのが8月のこと。当初はやはり「高値掴み」との見方も少なくなかった20億ドルという買値=チームの評価額も、リーグ全体の価値上昇を受けて推定22億ドルまで増加したとされている。また、その間にマイクロソフトも、後任であるサッチヤ・ナデラ現CEOの経営手腕によって株価も大きく回復し、個人大株主であるバルマーの資産もおおよそ2倍の410億ドルになった。

バルマーは熱心なオーナーでホームゲームではよくコートサイドに陣取っている姿がテレビ中継で流れたりもするし、また顧問として雇ったジェリー・ウエスト(NBAロゴの原型とされる往年のスター選手、現役引退後はある種の「優勝請負人」的存在に)をはじめ優秀な人材をフロント幹部やヘッドコーチに起用・配置という形で経営責任者としての手腕も発揮している。ただ、そんなオーナーとしての才覚や努力といったものだけでは、わずか5年で優勝候補ナンバー1のチームをつくれるとも思えない。やはり「ここぞ」という時の思い切りの良さが幸運につながっているのではないか。

本気で勝負の年の1年間

なおLACではこの日、2024年竣工予定で進めている総工費約10億ドルという新アリーナ建設も発表している。これがうまく実現までこぎつけると、チームの評価額はさらに上昇するはずだ。

10月なかばのシーズン開幕後、中核のスーパースターふたりに大きな故障さえなければ、LACはかなりの確率で優勝しそうな勢いだ。動画中で力説している優勝トロフィーの"LOB"ラリー・オブライエン・トロフィーを見事手にできるかどうか。ずっと先のドラフト指名権まで注ぎ込んで、来シーズンの優勝に向けて大博打に出たバルマーにとって、この先一年は間違いなく「本気で勝負の年」といえる。

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