乱立する「国境の壁」資金調達 全米33万人からの寄付金は行方不透明に
PACは波に乗れず
トランプ氏の「壁」構想は、政治行動委員会(PAC)を引き寄せる効果も発揮している。PACとは、寄付や支出に関して選挙運動よりもはるかに緩い規制のもとで活動する委員会だ。トランプ氏の当選後、少なくとも4つのPACが、「壁」及び志を同じくする候補者を支援することに力を注ぐようになった。
だが、どのPACを見ても、たとえ資金を集められたとしてもわずかな金額に留まっている。
「レイズ・ザ・ウォール」の財務担当者であるクリス・マーストン氏によれば、カリフォルニア州のウェブデザイナー、マイク・クリスト氏の依頼を受けて、2017年にこのPACを創設したという。寄付者は返礼品として刻印を施したレンガを受け取ることになっていたが、マーストン氏によれば、そのコストは高すぎたという。
「資金調達に要するコストが、調達した資金をすべて食いつぶしてしまった」とマーストン氏は言う。「レイズ・ザ・ウォール」は1万3246ドルを集めたが、候補者を支援することはないまま、6カ月後に解散してしまった。クリスト氏はコメントを拒否している。
別のPACである「ビルド・ザ・ウォール」は、似た名称のコルフェッジ氏による資金調達キャンペーンより早く、2018年1月に発足した。発起人はカリフォルニア州の政治コンサルタント、トミー・ネッパー、ブリアナ・ベイルスキー両氏だ。ネッパー氏によれば、2018年の中間選挙で共和党の上院議員候補のために資金を集める計画だったが、このPACは不発に終わり、1万4764ドルを集めただけで、選挙運動の支援は何もできなかった。
ネッパー氏は「ビルド・ザ・ウォール」からは何の収入も得ていないと述べ、財務担当者のベイルスキー氏は、勘違いによる募金を数件返金したという。
2人は、このPACを解散するつもりだという。ベイルスキー氏は「人々をいらだたせようと思ってやったことではない」と語った。
(翻訳:エァクレーレン)
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