慰安婦映画『主戦場』リアルバトル 「騙された」vs.「合意を果たした」
出演者らの抗議会見を受け、反論する記者会見を開いた映画『主戦場』のミキ・デザキ監督(6月3日) 写真:朴順梨
<ドキュメンタリー映画『主戦場』出演者が抗議声明を発表し、上映中止を求めて会見。その4日後、今度は監督側が反論の会見を開いた。焦点となっているポイントは――>
スクリーン上の言論バトルが、リアル空間に飛び出した。
慰安婦問題をテーマにしたドキュメンタリー映画『主戦場』に対し、5月30日に一部の出演者が上映中止を求める記者会見を開いた。同作は4月20日に東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで公開が始まったところ連日盛況となり、上映館が拡大。北海道から沖縄まで、40館以上での上映が予定されている。
会見で「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝副会長ら3人は、日系アメリカ人のミキ・デザキ監督が2016年当時は大学院生で、「これは学術研究でもある」と語ったことから「善意で学生の勉強に協力した」とし、「商業映画として一般に公開することを知っていたら、インタビューを受けることは決してなかった」などと説明。
今回抗議声明に名を連ねた藤岡氏と「テキサス親父」日本事務局局長の藤木俊一氏ら7人 は、監督との間に承諾書もしくは合意書を交わしているが、合意書に書かれた「甲(監督)は、本映画公開前に乙(出演者)に確認を求め、乙は速やかに確認する」という条項を監督が無視したと訴えた。
さらに、同作は藤岡氏や杉田水脈衆議院議員らを「歴史修正主義者」と呼び、貶めるためのグロテスクなプロパガンダ作品であるとして、上映中止に加えて法的に追及する考えを表明した。
「商業映画になる可能性を知っていた」
一方のデザキ監督は同日の会見後(※)、YouTubeに動画をアップした(下記)。その中で「実際に当時、私は大学院生でしたし、映画が卒業プロジェクトだと説明したのは事実です。しかし、もし完成した映画の出来が良ければ、映画祭への出品や一般公開も考えていると伝えていました......彼らは映画が一般公開されると知っていましたし、そして公開にとても乗り気だったのです」 と、騙して撮影したという指摘は誤りであると語っている。
そして6月3日、デザキ監督も配給会社「東風」代表の木下繁貴氏や東風顧問弁護士の岩井信氏らとともに記者会見を開いた。
席上でデザキ監督は承諾書と合意書を示しながら、「これは卒業プロジェクトではなく映画への出演承諾書です。学術プロジェクトとは一切書かれていません。ドキュメンタリー映画と記されています」と反論した。
さらに、抗議声明を発表した7人のうち5人が署名・捺印をした承諾書には、「制作者またはその指定する者が、日本国内外において永久的に本映画を配給・上映または展示・公共に送信し、または、本映画の複製物(ビデオ、DVD、または既に知られているその他の媒体またはその後開発される媒体など)を販売・貸与すること(第5項)」とあり、このことから商業公開される可能性があることを5人は知っていたと主張。