最新記事

DV

増え続ける男性DV被害者......「恥ずかしい」と誰にも相談できない

2019年6月21日(金)15時45分
モーゲンスタン陽子

<ドメスティック・バイオレンス(DV)というと、男性によるパートナー女性に対する暴力、というイメージが一般的だが、男性DV被害者が増え続けている......>

ドメスティック・バイオレンス(DV)「家庭内暴力、配偶者間暴力」という概念が日本でも定着して久しい。一般的に女性が被害者として語られることが多いが、実際には女性のパートナーからの精神的・肉体的な暴力に苦しむ男性も少なくない。

これまで男性の被害者は「恥ずかしい」「信じてもらえない」などの理由で誰にも相談できず、隠し通すケースが多かった。しかし最近、各国で声を上げる被害者が増えてきたようだ。それに伴い支援団体も増えてきたが、ドイツではこの度、2つの州政府が公的支援サービスを開始することを発表した。

増え続ける男性DV被害者

DVというと、男性によるパートナー女性に対する暴力、というイメージが一般的だ。だが、実際には男女間における男性の被害者も少なくない。アメリカでは今年に入って、自分の容姿に関する問いに返事をしなかった内縁の夫を殴った女性や、ボーイフレンドの性器を握りつぶし出血させた女性などが逮捕されている。どちらも20歳すぎの若い女性だ。

イギリスの最新調査(2018年3月)によると、前年のイングランドとウェールズのDV被害者は女性約130万人、男性約69万5千人とされる。調査対象となった男性(16〜69歳)のほとんどは金銭的な圧迫や脅迫、ストーカー被害など、精神的な嫌がらせを受けているようだが、約半数は身体的暴力、さらに5%は性的暴力も受けている。増え続ける犠牲者に対処するために、南ウェールズ大学などが救済プログラムを進めている(BBC)。

4人に1人が被害に

一方、ドイツ警察の発表によると、ドイツでは昨年、全DV被害者の約18%にあたる2万4千人弱の男性がレイプや殺人未遂などを含む暴力の被害にあったとされる。

ようやく明るみに出てきた男性のDV被害だが、何も最近始まったことではないようだ。2005年のドイツ政府の男性に対する暴力をテーマとした調査でもすでに「長期交際における暴力」の項目があり、インタビューを受けた196人のうち、4人に1人がパートナーから何らかの肉体的暴力を受けたことがあると報告している。うち、約10人は1つ以上の後遺症を抱えており、また同人数が生命の危険を感じたことがあるという。調査の対象は基本的に両性愛カップルなので、同性愛カップルにおける男性の被害者は含まれていない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、新誘導技術搭載の弾道ミサイル実験

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、25年に2%目標まで低下へ=E

ビジネス

米国株式市場=ダウ終値で初の4万ドル台、利下げ観測
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中