最新記事

米中貿易戦争

強気の米中、双方に死角あり「アメリカはまずい手を打っている」

Trump’s ‘Madman Theory’ of Trade With China

2019年5月14日(火)16時50分
キース・ジョンソン

――報道によると、中国側は、大々的な経済改革を実施すべきだというアメリカの要求を一旦受け入れていたのに、態度を翻したとされている。

一般論として言えば、中国を本当にその気にさせない限り、構造改革を断行させることはできない。アメリカが圧力をかけて実行させることは不可能だ。中国側が改革の必要性を信じ、改革が自国にダメージを与えることはないと納得しなければ、たとえ改革を約束しても、いずれごまかしたり、骨抜きにしたりするだけだ。

――中国指導部は、改革が必要だと思っていないのか。

以前は、中国共産党で会議が開かれるたびに、習近平(シー・チンピン)国家主席が権力を固めたら改革に乗り出すと言われ続けていた。私はそのときから眉唾物だと思っていた。習が改革を目指しているようには見えなかった。

実際、中国の株式相場が暴落したとき、中国政府は本来取るべき行動と正反対の行動を取った。そしてこの前の党大会では、誰も改革の話をしなくなった。

いま中国の経済改革派は全く影響力を持っていない。このグループの中には、トランプを救世主のように考えている人たちもいる。トランプが習の慢心を揺さぶれば、自分たちが新しい選択肢を提案するチャンスが訪れるのではないかと考えているようだ。

彼らも、トランプのことが好きなわけではない。それでも、トランプというドラゴンが襲来して村を焼き尽くせば、自分たちが好きなように村を再建できると期待している。だから、ドラゴンよ来たれ、と思っている。中国の改革派が置かれている状況は、それくらい厳しいと言わざるを得ない。

From Foreign Policy Magazine

<2019年5月21日号掲載>

※本誌5月21日号は「米中衝突の核心企業:ファーウェイの正体」特集。詳しくは本誌をご覧ください。

【参考記事】5G戦争:ファーウェイ追放で得をするのは誰か?

ニューズウィーク日本版 2029年 火星の旅
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月20日号(5月13日発売)は「2029年 火星の旅」特集。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、追浜と湘南の2工場閉鎖で調整 海外はメキシコ

ワールド

トランプ減税法案、下院予算委で否決 共和党一部議員

ワールド

米国債、ムーディーズが最上位から格下げ ホワイトハ

ワールド

アングル:トランプ米大統領のAI推進、低所得者層へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」する映像が拡散
  • 4
    大手ブランドが私たちを「プラスチック中毒」にした…
  • 5
    宇宙の「禁断領域」で奇跡的に生き残った「極寒惑星…
  • 6
    ヤクザ専門ライターが50代でピアノを始めた結果...習…
  • 7
    MEGUMIが私財を投じて国際イベントを主催した訳...「…
  • 8
    配達先の玄関で排泄、女ドライバーがクビに...炎上・…
  • 9
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 10
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到し…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」する映像が拡散
  • 4
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 5
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 8
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 9
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 10
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 8
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 9
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 10
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中