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日本でラウンドアバウト(環状交差点)が少しずつ増えているのをご存知ですか?

2018年10月29日(月)15時05分
内村コースケ(フォトジャーナリスト)

それに関連して、ラウンドアバウトの国、イギリスに住み、その後も帰国子女教育の取材に長年携わって来た筆者の見解を披露させてもらえば、信号交差点は「指示待ち」のシステムであり、ラウンドアバウトは「ルールに基づいた自己責任」のシステムである。これまでの日本人のメンタリティに合っているのは、前者であろう。日本の信号交差点の風景は、少数のリーダーシップに大多数が一律に従うことで発展してきた戦後日本の工場労働者型・サラリーマン型社会の縮図にも見える。一方、ラウンドアバウトでは「環道優先・徐行で侵入」という基本ルールのもと、局面局面ではドライバー個々の判断によって円滑な通行が実現する。西欧型の自己責任の世界だと言えよう。

その一方で、ラウンドアバウトには「譲り合い」を尊ぶ日本の「和」の精神に通じる面もあると思う。日本社会は今、「指示待ち」の一律的な集団社会から、個の力の結集による自己責任型の社会へのシフトを目指している。少なくとも教育現場は、盛んに「グローバル化」というキーワードを掲げ、その方向へ舵を切っているのは間違いない。ラウンドアバウトの普及は、日本社会のメンタリティの変化・発展の試金石の一つだと言ったら大げさだろうか。

英プログレッシヴ・ロック・バンド「イエス」の代表曲「ラウンドアバウト」の歌詞は、ボーカルのジョン・アンダーソンがドライブ中にラウンドアバウトに差し掛かった際に、ひらめいたものだそうだ。環状交差点の車の流れの輪廻転生的なイメージと、大自然・人の心の調和を重ね合わせた哲学的な歌詞が印象的である。

<I'll be the roundabout/The words will make you out 'n' out/I spend the day your way/Call it morning driving thru the sound and in and out the valley><僕はラウンドアバウトになる/環状に巡った言葉が君を完璧にする/そして僕は君のやり方で一日を過ごした/それを音を突き抜けて渓谷を出入りする朝のドライブと呼ぼう>(Yes/Roundaboutより 訳詩・筆者>

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