最新記事

核兵器

ロシアの核魚雷が起こす「放射性津波」の恐怖

2018年4月26日(木)18時00分
トム・オコナー

核魚雷も搭載可能な水中ドローンは、プーチンの終末兵器だ Russia Insight/YOUTUBE

<プーチンが3月に発表した無敵の核兵器は、3・11も上回る大津波を発生させる可能性があると専門家が警告>

ロシアが誇る最も高度な最新兵器の1つ、魚雷を搭載した水中ドローン(無人機)は、放射能に汚染された津波で米沿岸部一帯を壊滅させるおそれがあると、今週専門家が警告した。

全面的な兵器刷新計画の一環としてロシアが開発したこのシステムは、この種の兵器としては威力、速度ともに最高で、画期的な性能を持つとされる。核魚雷が発射されれば、その衝撃波で2011年に日本の東北地方を襲った大地震と津波に匹敵するか、それ以上の惨事が起きるおそれがある。東日本大震災では、死者は1万6000人近く、福島第一原子力発電所の1〜3号機がメルトダウンする史上最悪クラスの核災害が起きた。

「海岸近くで20〜50メガトン級の核兵器を発射すれば、2011年の津波に匹敵するか、条件しだいではそれをはるかに上回るエネルギーを生み出せる」と、核兵器に詳しい物理学者のレッックス・リチャードソンは4月24日、米ニュースサイトのビジネスインサイダーに語った。「海底を大きく隆起させることで、高さ100メートルにも及ぶ津波を起こせる」

これには否定的な見解もある。ローレンス・リバモア国立研究所(カリフォルニア州)の核物理学者グレッグ・スプリッグスは、核爆発で津波を起こすという考えは「全くもってバカげている」と以前に語っていた。ただ、スプリッグスも、米政府が2月に発表した「核態勢の見直し」(NPR)とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が3月1日に議会で行った年次教書演説の内容を受けて、津波を起こすための核の使用は「無駄」だとしながらも、「起こすことは可能だろう」と認めた。

3月1日の年次教書演説でプーチンが使ったシミュレーション動画


「都市バスター」の破壊力

プーチンは3月の年次教書演説で、原子力推進の水中ドローンを軍事目的で開発したと公式に認めた。既存の原子力潜水艦と比べ、原子炉のサイズは100分の1だが、威力はより大きく、最高速度は200倍にも達するという。

プーチンによると、水中ドローンは「大陸間の極めて深い海中を潜水艦の何倍もの高速で移動できる」。「静かで、操作性が高く、敵につけこまれるような脆弱性は皆無と言ってよく、これに耐えうるものは今の世界には存在しない」

愛称公募で「ポセイドン」と名付けられたこのシステムは、以前から専門家や当局者が推測していた通り、「通常弾頭だけでなく核弾頭も搭載でき、軍用機の発進拠点、沿岸の防衛施設、インフラなど多様なターゲットを攻撃できる」と、プーチンは述べた。

こうした兵器の開発計画は、2015年9月、米ニュースサイト・ワシントン・フリー・ビーコンが初めて報じた。同サイトは米国防総省筋の話として、ロシアが「何十」メガトン級もの爆発力があり、長距離を高速で移動できる、「都市バスター」と呼ばれる核魚雷搭載の潜水艦を建造中だと伝えた。米国防総省はこの計画を「カニヨン」と呼んでいた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今

ワールド

APEC首脳会議、共同宣言採択し閉幕 多国間主義や

ワールド

アングル:歴史的美術品の盗難防げ、「宝石の指紋」を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中