最新記事

サイエンス

血が噴き出る「最も奇妙な症例」の女性、診断は血汗症

2017年10月24日(火)17時40分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

症例が報告された21歳の女性患者 Roberto Maglie/University of Florence/CMAJ

<2000年以降だけで同じような症例が18件見つかっている。感染症を疑われ、社会的に隔離された患者の心理的負担はかなり大きそう>

それはイタリアの医師チームが今まで見た中で最も奇妙な症例だった。

搬送されたのは21歳の女性。顔や手のひらにはべったりと、まるで汗のように血がついていたそうだ。怪我をしたのかと思いきや、そんな様子はなく、さらに皮膚病変の兆候もなかった。

CBC(カナダ国営放送)など複数メディアが、10月23日にカナダ医師会(CMAJ)のウェブサイトで報告されたこの奇妙な症例について報じている。論文をまとめた、伊フィレンツェ大学病院の皮膚科医ロベルト・マリエ医師によれば、患者は3年もの間、原因不明の出血が続いた。睡眠中や身体活動の最中に自然と出血するという。患者が強いストレスを受けているときには、より激しい症状がみられ、1~5分程度出血し続ける。

個人機密のため患者の名前など詳細は明らかになっていないが、同サイトに掲載された記事によると、出血した患者は社会的に隔離されたことが原因でうつ病を発症したとされる。検査の結果から、血球数や血液凝固機能は正常だと分かると、隔離は解かれた。

女性患者に下った診断は血汗症。血液が皮膚や毛穴を通って汗をかくように排出される、とても珍しい疾患という。身体の汗腺のない部分でも出血があったと報告されている。心臓血圧治療薬のプロプラノロールが処方され、症状は良くなったが、完全に寛解したわけではない。

出血の原因特定には至っていないが、さまざまな可能性が挙がっている。例えば、極度の感情反応が身体的な病気を引き起こす場合、血液の凝固能力が損なわれる出血性障害もしくは心理遺伝的疾患が考えられるという。

「最高に珍しい症例」

カナダ・トロントの血液学者は、この症例を「最も珍しい」とコメントしている。セントマイケル病院で血友病のケアプログラムに携わるミシェル・ショルツバーグ医師は「こんな症例はこれまで一度も見たことがない」という。「これまでに最悪の出血性疾患をいくつか見たことがあるが、汗のように血が滲むものはなかった」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中