最新記事

法からのぞく日本社会

国民審査を受ける裁判官はどんな人物か(判断材料まとめ・後編)

2017年10月20日(金)17時33分
長嶺超輝(ライター)

6:「加計学園の役員だったけれど......」木澤克之

立教大法卒・弁護士出身・東京都出身
就任:2016年7月19日/定年:2021年8月26日

《プロフィール》
新宿区の法律相談を担当し、法務省の人権擁護委員を歴任。立教大学出身者で初の最高裁判事。

獣医学部の新設認可をめぐって安倍首相の関与が疑われている学校法人「加計学園」の監事を務めていた時期がある。加計学園理事長も立教大出身であることから、この任命について国会でも問題視された。なお、他の弁護士出身判事と同様、日弁連の推薦を受けている。

2017年3月30日、民進党(当時)の木内孝胤議員が衆議院地方創生特別委員会で質問に立ったところ、まるで日弁連の推薦なしに木澤弁護士が最高裁判事に選ばれたかのような、事実誤認に基づく質問があった。山口厚判事の件と混同したとみられる。

《主な発言》
・2016年7月19日、最高裁判事就任会見にて。
「弁護士出身の自覚と誇りを持って、最高裁判事として取り組みたいと思います。零細企業の経営者や市民が、法律知識がないために苦労したりトラブルに巻き込まれたりすることに対し、直接手助けできる弁護士を選びました」

「(憲法改正について尋ねられて)国民的な議論をもとに、社会全体で決められることだと考えていきます。動向を注意してみていきたいと思います」

・『法学教室』2006年12月号。立教大学法科大学院で「民事実務の基礎」講義を担当。
「(学生に向けてのメッセージ)専門分野の実務能力を身につけることは当然のことですが、公共への奉仕という自覚を持って仕事をする法曹になってほしいと思います。宗教家・法律家・医者のことをプロフェッションといいますが、どのような意味でプロフェッションなのかを考え、また、法曹はいかにあるべきかを常に念頭に置いて仕事をしていく法曹になってほしいと思います」

《主な関与判決》
・建設作業員が勤務中の事故で脳脊髄液減少症になった労働災害について、「発症が確実に証明されていない」として、障害等級の引き上げを認めなかった二審判決を支持(※一審和歌山地裁は、障害等級の引き上げと障害年金の支給を認めた)。

・陸上自衛隊パレードの反対集会に、公共施設(金沢市役所前広場)を使わせない金沢市(石川県)の不許可処分を、憲法の定める集会の自由に反せず、適法とした。

・大阪市長選の立候補を表明した府知事について、その父と叔父が反社会的勢力の一員だと報じた週刊誌の記事に、名誉毀損はないと結論づけた原審判決を支持。「(首長としての)人格形成に影響しうる事実で、公共の利害に関わる」とした。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米住宅価格指数、3月は前年比6.7%上昇 前月比で

ビジネス

米CB消費者信頼感、5月は102.0 インフレ懸念

ビジネス

アクティビスト投資家エリオット、米TIへの25億ド

ワールド

EU、ウクライナ国内での部隊訓練を議論 共通の見解
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 2

    汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏最新インタビュー

  • 3

    プーチンの天然ガス戦略が裏目で売り先が枯渇! 欧州はロシア離れで対中輸出も採算割れと米シンクタンク

  • 4

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 5

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 6

    コンテナ船の衝突と橋の崩落から2カ月、米ボルティモ…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    TikTokやXでも拡散、テレビ局アカウントも...軍事演…

  • 9

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 10

    メキシコに巨大な「緑の渦」が出現、その正体は?

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 7

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 8

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 9

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 10

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中