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中国版『ランボー』は(ある意味)本家を超えた

2017年8月31日(木)11時20分
長岡義博(本誌編集長)

「屈辱の歴史」を思い出す

ラストに近い戦闘シーンで、「弱っちい国!」と罵倒しながら追い詰めてくる傭兵部隊の白人兵士を、最後に主人公が反撃して倒す。劇場で拍手喝采する中国人観客が思い浮かべるのは、列強の植民地にされた中国の屈辱の歴史だろう。

愛国心が爆発するシーンも満載だ。「アフリカでは手に入らない!」と言ってギョーザを頬張るのはまだかわいい。極め付きは、中国のパスポートの写真と共に「あなたが国外で危険に遭遇しても偉大な祖国がついている」という言葉が映し出されるエンドロール。中国のパスポートが、ビザなしで行ける国が皆無の極めて不便な代物であることは、中国人が誰より詳しい。

【参考記事】中国人の欲しい物が変わった――アリババ越境ECトップ訪日の理由

そして恐ろしいことに......中国人たちを苦しめる傭兵部隊を葬り去るのは、アフリカ沖に展開した中国海軍のミサイルだ。

ベトナム帰還兵の悲哀を描くシリアスな『ランボー』は、作を重ねるごとにアクション重視のむちゃな設定だけが目立つ「駄作」に変わった。主人公の筋肉量こそ及ばないが、そういう意味で『戦狼2』は本家を超えたかもしれない。

この映画を生み、この映画が興行収入記録を更新し続けているのが、今の「等身大の中国」なのだ。残念ながら。

<本誌8月29日発売最新号掲載>

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