初顔合わせの米ロ首脳会談、結果はプーチンの圧勝
首脳会談で大物感を印象付けたプーチン(左)。握手の手を差し出したのはトランプのほうだった Carlos Barria-REUTERS
<トランプは懸念された失言や失敗こそなかったが、ロシアの大統領選介入疑惑は事実上「不問」に>
今月、G20首脳会議に合わせてドイツのハンブルクで初の首脳会談をした際、トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領が何を話したのか、正確なことは永遠に謎のままになるかもしれない。
両首脳ともそれぞれの思惑があるし、アメリカのティラーソン国務長官はいつも多くを語らず、ロシアのラブロフ外相の言葉も当てにならない。公式の記録係は同席しておらず、通訳者のメモが流出することもまずあり得ない。
それでも、ここまでの報道からいくつか言えることがある。最も重要なのは、首脳会談がプーチンにとって大成功だったということだ。
ティラーソンは首脳会談後の記者会見で、トランプがロシアの米大統領選介入疑惑に複数回言及したと述べた。しかし、ラブロフによれば、プーチンは疑惑を否定し、トランプもその説明を受け入れたという。
ラブロフが誇張して話している面はあるだろう。それでも、両首脳が「過去のことを蒸し返す」のではなく「前に進む」ことで合意したと、ティラーソンも述べている。要するに、プーチンは、アメリカの民主主義に対して情報戦争を仕掛けておきながら、その代償を支払わずに済むことになったのだ。
【参考記事】G20で孤立したのはトランプだけでなくアメリカ全体
トランプにしては上々?
約2時間15分の首脳会談で多くの時間が割かれたのは、シリア問題だった。両首脳は、シリア南西部の停戦に合意した。この停戦が持続すれば確かに意義は大きいが、ティラーソンも認めているように、細部の詰めはまだこれからだ。
ウクライナ問題も話題に上りはしたものの、両国がウクライナ問題担当の特別代表を選任することで合意した以外はほとんど進展がなかったようだ。対ロ制裁やクリミアの帰属、ウクライナ東部からのロシア軍の撤退時期といった問題が話し合われたかは、ティラーソンもラブロフも一切言及していない。
米ロ関係が緊張状態にあることを考えれば、このくらい冷静な話し合いができれば上出来だったという見方もできるだろう。だが、今回の会談でトランプよりプーチンのほうが目的を達したことは間違いない。