最新記事

日本経済

日銀、物価2%達成「19年度頃」に先送り 金融政策は現状維持

2017年7月20日(木)19時00分

7月20日、日銀は19─20日の金融政策決定会合で、長期金利目標をゼロ%程度、短期金利目標をマイナス0.1%とする現状の金融政策の維持を賛成多数で決めた。写真は都内で昨年9月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

日銀は19、20日の金融政策決定会合で、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する現行の金融政策の維持を賛成多数で決定した。国債買い入れについても、保有残高を年間約80兆円増加させるペースとする表記を残した。

同時に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)見通しを下方修正し、目標とする物価2%の到達時期を「19年度ごろ」に先送りした。黒田東彦総裁は会見で度重なる目標達成延期を「残念」と総括するとともに、主要国と同じ2%の物価目標を掲げることが「為替安定に資す」と強調した。

日銀が物価2%の到達時期を先送りするのは、13年4月に黒田総裁が就任してから6回目。前回4月の展望リポートでは「2018年度ごろ」としており、1年程度、後ずれさせたことになる。

コアCPI見通し(政策委員の大勢見通しの中央値)は、17年度を前年比1.1%上昇、18年度を同1.5%上昇、19年度を同1.8%上昇とし、それぞれ前回の同1.4%上昇、同1.7%上昇、同1.9%上昇から引き下げた。一方、17年度と18年度の成長率は小幅上方修正した。

景気が好調な一方で、物価の足取りの鈍さが一段と鮮明になった背景について、人手不足が深刻化する中で「省力化投資の拡大やビジネス・プロセスの見直しにより、賃金コストの上昇を吸収しようとしている」との分析を盛り込み、中長期的な予想物価上昇率の高まりも後ずれしているとした。

会見では、物価目標として2%は過大でないかとの質問に対して、黒田総裁は、デフレに舞い戻らないためには2%程度ののりしろが必要であるほか、「各国が掲げるグローバル・スタンダードだから」と述べ、「各国が同じ物価上昇率を目指すのは、長い目で見た為替レートの安定に資する」と説明。他国と共通目標を掲げていることで、投機的な円高誘導などを防いでいるとの現状を暗に示唆した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

国債先物は続落、長期金利約12年半ぶり高水準1.0

ビジネス

中国国有銀が人民元を下支え、スワップ取引活用=関係

ビジネス

上昇続く長期金利、「常態」とは判断できず=安達日銀

ワールド

台湾議会の権限強化法案、頼政権は再審議要求へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 2

    メキシコに巨大な「緑の渦」が出現、その正体は?

  • 3

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 4

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    プーチンの天然ガス戦略が裏目で売り先が枯渇! 欧…

  • 7

    汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 10

    「天国に一番近い島」で起きた暴動、フランスがニュ…

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 6

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中