最新記事

ビジネス

いまなぜ「国産」? オーダースーツが人気のメンズファッション

2017年4月28日(金)15時02分
海老原光宏 ※Pen Onlineより転載

hanabishi_MVl0RnU.jpg

2階の内観。こちらがオーダースーツのフロア。

2階はオーダーサロンです。スーツ、ワイシャツ、ジャケット、パンツ、コート、ジレがオーダー可能。スーツは生地、シルエット、ラペル幅やボタンなどのディテールを組み合わせること30,000通り以上に及ぶと言います。価格は39,000円からで、納期は約3〜4週間。また、ブランドホームページではカスタムをシミュレーションすることができ、オーダーシートとしてプリントして店舗に持参することも可能となっています。この手軽さ、アフォーダブルさがいまのメンズマーケットに受けているのでしょう。

体験価値のビジネスモデル

こういったオーダービジネスで話題を集めているブランドがいくつかあります。紳士服大手のコナカが佐藤可士和をクリエーティブディレクターに迎えたスーツブランド「DIFFERENCE」は昨年10月のローンチからわずか半年ほどで12店舗出店とアクティブです。スマホアプリで店舗予約、カスタムオーダーもできるというモバイル時代に適したサービスを実施しています。

スタートアップ領域でも注目を集めている分野で、メンズカスタムオーダーブランド「La Fabric」を運営するライフスタイルデザインは、この1月に4億円の大型資金調達を完了したばかりです。こちらは当初ECから始まり、現在ではリアル店舗も出店。工場、生地屋と直接取り引きし、中間マージンを削減。撥水や洗える生地を開発し、機能的かつリーズナブルなオーダースーツを提供しています。

【参考記事】【グランドセイコー、未来へ紡ぐ10の物語】Vol.2 実用する道具として美しさを追求した、確かなカタチ

これら3者に共通しているのは、現代の消費者の多様化するニーズに"オーダー"で応えられていることと、サプライチェーンの垂直統合によるクオリティーとプライスのバランスの良さです。商品はmade in Japanという裏付けをもち、質は間違いないレベルに達しています。それが品質と価格にシビアな今の消費者に"刺さる"状態になっているのです。

自社サイトなどから発信するコンテンツでコンセプトをしっかり伝え、ブランドイメージを確立していることも見逃せません。リアルとデジタルを行き来する現代の男性に向けたマーケティング施策がユーザー体験を向上させているのでしょう。ブランディングなら海外ラグジュアリーブランドも得意としているところですが、大量の広告宣伝費を織り込んだ上代設定に消費者は気付き始めており、現代の日本の中間層には響きづらくなっています。既製服で30万円以上、オーダーとなると50万円以上も当たり前というインポートブランドは、その値段に見合う価値を伝えることが難しい時代なのでしょう。

私は以前からオートクチュール=注文服こそ最高のビジネスモデルと考えていました。既製服に比べ在庫リスクがなく、顧客満足度が高い。問題は納期と価格でしたが、サプライチェーンの見直しによって、かなり改善されています。デジタル時代のオーダーファッション。このモデルに国内アパレル産業復活のヒントが隠されているのではないでしょうか。


HANABISHI 銀座店

住所:東京都中央区銀座1-7-17 銀座一丁目ガス灯通ビル1F/2F
電話:03-5524-1091
営業時間:11時〜19時30分
定休日:水曜日


※当記事は「Pen Online」からの転載記事です。

PenOnline





【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

株式・債券ファンド、いずれも約120億ドル流入=B

ワールド

中国、総合的な不動産対策発表 地方政府が住宅購入

ビジネス

アングル:米ダウ一時4万ドル台、3万ドルから3年半

ワールド

北朝鮮、東岸沖へ短距離ミサイルを複数発発射=韓国軍
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中