最新記事

経営

未発表研究が示す「大胆で進歩的な」財務担当者の時代

2017年3月13日(月)19時35分
ベン・ウォーカー(Dialogue誌編集長) ※編集・企画:情報工場

andrewgenn -iStock.

<「財務担当者といえば保守的で堅実、慎重派」が相場だったが、全米CFO連盟の研究によれば、新たなタイプの財務プロフェッショナルが登場し始めている>

企業のファイナンス部門は、ビジネスにおいて思い切った大胆な戦略をとることが滅多にないと言われる。財務担当の経営幹部は慎重派で迎合的、リスク回避型の戦略を立案しやすいとみなされており、チャンスに賭けるよりも、せせこましく細部にこだわり、目の前の問題解決にフォーカスして思考しがちな人種と思われている。

だが、そんな時代は終わりを告げるかもしれない。なぜなら、幅広い視野で大局的に物事を考えられる新種のCFO(最高財務責任者)が現れはじめた兆しがあるからだ。

Dialogue誌が独占的に入手した未発表の研究成果がその証拠。商才に長け、ダイナミックで進歩的な思考のできる財務リーダーの草分け的な一群が登場したことを示している。守旧派になりがちだったこの職種に新しい息吹をもたらしつつあるのだ。

この現象は、職業団体である全米CFO連盟による研究で見出されたものだ。GC Indexを使用する専門家によって裏づけられた研究だが、GC Indexは組織の現在形を切り取る優れたツールとして知られている。

その研究は、米国企業3社から選ばれた、職位の高い20人の財務プロフェッショナルを綿密に分析したものだ。3社は、住宅建材、資産管理、ソフトウエアという、それぞれ異なる産業に関わる企業からピックアップされている。

GC Indexのデータベースは、幾分かは従来の財務担当幹部のステレオタイプを示した。実利優先で、定型的なタスク処理にフォーカスした戦略立案をする、大局的な見地から商機を捉えるよりも目の前の問題解決に注意を向けがち、といった特徴だ。

しかし一方で、少数ながら、ダイナミックで進歩的な考え方のできる財務プロフェッショナルがいることもわかった。彼らは自ら所属する組織に変革をもたらしていた。

「彼らはビジネスに、これまでとは大きく異なる商業的価値を加えられるでしょう。社内でその能力が認められて生かされ、彼らのアイデアを実現する機会が与えられるならば、の話ですが」と、GC Indexの首席心理分析官でディレクターのジョン・メルヴィン=スミス博士は話す。

財務において戦略的思考は重要だ。新たに現れた進歩的な考え方のできるCFOは、自ら分析したデータをもとに企業全体がどこに向かうべきかを割り出し、CEOや他部門のトップにアドバイスできる。実際の取引データとその数値分析を確固たるベースにして、ビジネスの戦略的な方向性を提案するのが最良の財務リーダーといえよう。

経営幹部の役割の5つの要素

だが、財務プロフェッショナルがそのように変化していくまでには、いくつかのプロセスが残っている。GC Indexは経営幹部の役割を次の5つの要素に分類している。

【参考記事】頭が良すぎるリーダーの、傲慢で独りよがりな4つの悪い癖

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

オーストリア中銀総裁、金利見通しに慎重姿勢 利下げ

ワールド

英首相、第2次世界大戦の式典退席を謝罪 選挙戦に痛

ワールド

北朝鮮がごみ風船再開、韓国は拡声器放送で対抗へ

ワールド

仏戦闘機、ウクライナに年内供与 パイロット訓練へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナの日本人
特集:ウクライナの日本人
2024年6月11日号(6/ 4発売)

義勇兵、ボランティア、長期の在住者......。銃弾が飛び交う異国に彼らが滞在し続ける理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...? 史上最強の抗酸化物質を多く含むあの魚

  • 2

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっかり」でウクライナのドローン突撃を許し大爆発する映像

  • 3

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らかに ヒト以外で確認されたのは初めて

  • 4

    ガスマスクを股間にくくり付けた悪役...常軌を逸した…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 7

    ロシア軍が「警戒を弱める」タイミングを狙い撃ち...…

  • 8

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕…

  • 9

    英カミラ王妃が、フランス大統領夫人の「手を振りほ…

  • 10

    【独自】YOSHIKIが語る、世界に挑戦できる人材の本質…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が34歳の誕生日を愛娘と祝う...公式写真が話題に

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 5

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 6

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「…

  • 7

    「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新た…

  • 8

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 9

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品…

  • 10

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 8

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中