最新記事

日米関係

トランプ政権の対日外交に、日本はブレずに重厚に構えよ

2016年11月10日(木)19時30分
冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)

Mike Segar-REUTERS

<トランプ政権が現実的な中道保守政策を取るか、それとも優秀なブレーンが集まらずに早期に行き詰まるか――。日本はどちらのケースにも対応できるよう、ブレない姿勢で備えるべきだ>(写真:勝利演説で副大統領候補のペンスと握手するトランプ)

 世界中が驚き、アメリカでも多くの予想が外れる中で、ドナルド・トランプが次期大統領に決まった。各方面のショックは大きいが、一つだけ救いだったのはトランプの勝利宣言スピーチだ。何より「分断の傷を癒やして団結を」というメッセージを冒頭に持ってきたのは、とにかくあの場所、あのタイミングで言う勝利宣言としては、極めて妥当で、「あのスピーチだけ」について言えば100点満点と言える。

 この「和解と協力」というメッセージに呼応するように、ヒラリー・クリントン候補も一夜明けた午前中に、見事な敗北宣言を行った。あれだけ厳しくトランプ批判を展開していたオバマ大統領も、協力を約束している。これで当面の政権交代期間への移行は、まずスムーズな入り方ができた。

 一時期は株先物で700ドル近い下げを見せていたニューヨーク市場も、一夜明ければダウ平均が反発して上げたくらいで、目先のショックは何とか「かわす」ことができている。

【参考記事】クリントン当選を予想していた世論調査は何を間違えたのか

 そうは言っても、現時点ではトランプのブレーン候補に関しては全くの白紙状態だ。名前が出ている人間は一流半、いや二流の人ばかりで、最終的に「一流のブレーン」で固められるかどうかが当面の注目事項となる。

 では、日本としてはこれにどう対応すればいいのか。以下の2つのシナリオを前提に考えたい:
(1)トランプが共和党の中枢と和解し、有能なブレーンを集めて現実的な中道保守政策を実行する。
(2)優秀な人材が集まらず、選挙運動の論功行賞要求や猟官運動をうまくコントロールできず、結果的に偏った人材が集まって、極端な政策の一部が本当に実行されることで早期に行き詰まる。

 日本としては、この2つの可能性を考えておくべきだ。まず(1)を前提にして、ワシントンの穏健な共和党人脈との連携を密にすることは重要だ。トランプは日本に関して、「非現実的なことをブレなく」言い続けているので、実際に政権が発足した場合、現実を直視して理解してもらわなくては困るからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英政府、対ロ制裁回避の船舶に制裁導入

ワールド

ロシア、原油価格上限への対抗措置延長 年末まで

ビジネス

午前の日経平均は小幅続落、日銀結果待ちで方向感に欠

ワールド

イタリア成長率、今年と来年はともに0.8%に=中銀
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名が海水浴中に手足を失う重症【衝撃現場の動画付き】

  • 3

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 4

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 5

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 6

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 7

    国立新美術館『CLAMP展』 入場チケット5組10名様プレ…

  • 8

    ジブリの魔法はロンドンでも健在、舞台版『千と千尋…

  • 9

    長距離ドローンがロシア奥深くに「退避」していたSU-…

  • 10

    「これが野生だ...」ワニがサメを捕食...カメラがと…

  • 1

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 2

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 5

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 6

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 7

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 8

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開する…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中