最新記事

オリンピック

「ジカ熱懸念」で五輪を辞退するゴルファーたちの欺瞞

2016年7月21日(木)15時50分
ジョシュ・レビン

Paul Childs-REUTERS

<男子トッププロが相次いでリオ五輪への不参加を表明。賞金が出ない五輪を面倒くさがるスター選手が、「ジカ熱」への懸念を理由にするのは欺瞞でしかない>(写真はリオ五輪よりテレビ観戦を選んだローリー・マキロイ)

 メジャー通算4勝のローリー・マキロイはリオデジャネイロ五輪に出ない。五輪はテレビで観戦する。「ゴルフ競技を見るかどうかは分からないが、陸上や競泳は大事だから見逃せないね」と最近の記者会見で語っている。

 112年ぶりにゴルフが五輪の正式種目に復帰したというのに、男子プロツアーの一流どころは続々と参加辞退を表明している。現時点の世界ランキング上位4人(ジェイソン・デイ、ダスティン・ジョンソン、ジョーダン・スピース、そしてマキロイ)は全員、リオでの熱戦より自宅での休養を選んだ。なぜか。北アイルランド出身のマキロイが今回の発言でほのめかしたように、要は「五輪になんか出たくない」からだ。

【参考記事】暗雲漂うリオ五輪を襲った7つの嫌なニュース

 ちなみにマキロイは今年6月、「ジカウイルスへの感染リスクは低いとされているが、それでもリスクであることに変わりはない。そんなリスクを、自分は取りたくない」と述べていた。他のトッププロも、同様にジカウイルスを媒介する蚊に責任をなすり付けるような発言をしている。例えばデイは「もしもジカウイルスに感染すれば、いずれ妻が妊娠したとき、生まれてくる子にリスクが及ぶ可能性がある」と語っていた。

「名誉も賞金もないのに」

「くだらない」――同じく出場を辞退したビジェイ・シンの発言以上に選手たちの本音を言い当てた言葉はないだろう。スポーツ専門ケーブルテレビ局ESPNの記者ジェイソン・ソベルは、ジカ熱が「プロゴルファーにとって格好の免罪符になっている」と指摘している。

 既に一財産を築いているスター選手たちが五輪を敬遠する理由は山ほどある。そもそもトップゴルファーは五輪でメダルを取ることなど夢見ていない。ゴルフを五輪種目に復帰させたかったのは、選手たちではない。ゴルフの統括団体だ。

 ゴルファーは名誉と賞金を獲得できる試合に出場することで忙しい(五輪で賞金は出ない)。それにゴルファーの選手寿命は長いから、今年の五輪にこだわる理由もない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 5

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中