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南シナ海「軍事化」中国の真意は

西沙諸島へのミサイル・戦闘機配備が注目されているが、本当に軍事バランスを変えるのは南沙諸島だ

2016年3月23日(水)19時37分
シャノン・ティエジー

実効支配中 ウッディー島を巡回中の中国人民解放軍海軍の兵士たち REUTERS

 南シナ海における中国の軍事的進出が止まらない。最近も、西沙(パラセル)諸島にあるウッディー(永興)島へ新たに紅旗9地対空ミサイル発射台と殲11戦闘機が配備され、大いに注目を集めている。とりわけ危機感を抱いているのはアメリカ政府で、中国による南シナ海のさらなる「軍事化」だと強く反発している。

【参考記事】中国が西沙諸島に配備するミサイルの意味

 ジョン・ケリー米国務長官は先月、「習近平(シー・チンピン)国家主席はバラク・オバマ大統領とローズガーデンに立ち、南シナ海を軍事化する意図はないと明言した」と指摘し、「しかし、あれやこれやの軍事化が進んでいることを示す証拠」は山ほどあるとした。

 その後、米上院軍事委員会の公聴会に出席した米太平洋軍のトップ、ハリー・ハリス司令官の言葉はさらに単刀直入だった。「私の見解では、中国は明らかに南シナ海の軍事化を行っている。それを否定するのは、地球は平らだと言うに等しい」

 そのとおりだろうが、ウッディー島へのミサイル配備を新たな「軍事化」の証拠と論じるのには無理がある。

「軍事化」の概念には何らかの現状変更が含まれるはずだ。しかし中国は半世紀以上も前からこの島に軍隊を駐留させている。また、この島は人工島ではなく、以前から中国が実効支配している。つまり、突貫工事の埋め立てで造った人工島に滑走路や港を建設している南沙(スプラトリー)諸島ファイアリークロス礁の状況とは根本的に異なる。

 ウッディー島は自然にできた、昔からある島だ。地表面積は2平方キロを超え、西沙諸島では最大の島であり、56年に中国軍が占領して今日に至る。

 この島には「三沙市」の市庁舎がある。中国政府が12年に、南シナ海の島々を管轄する行政単位として新設したのが三沙市で、西沙諸島と南沙諸島に加え、マックルズフィールド堆やスカボロー礁も管轄している(三沙は中国語で「3つの島」を意味し、具体的には西沙諸島、南沙諸島と中沙諸島を指す)。

 また新華社通信によれば、南シナ海の多くの島と異なり、ウッディー島には三沙市設置の時点でかなりの数の民間人が暮らしていたという。兵士も含めれば島の住民は1000人を超えるとされ、島には彼らの生活を支えるために政府の出先機関や病院、学校があり、銀行やスーパーマーケットまである。

 空港もある。軍事的な役割だけでなく、海南島の海口美蘭国際空港との間を往復する民間機も受け入れている。最近の拡張工事で滑走路が延び、今ではボーイング737型機の離発着も可能になった。

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