最新記事

バルカン諸国

マケドニアの対テロ作戦で民族紛争が再燃?

反政府デモが吹き荒れるなか、謎のテロ組織との銃撃戦で警察官5人が死亡

2015年5月11日(月)15時20分
デニス・リンチ

予想外の作戦 銃撃戦で一時離れ離れになり、再会した家族 Ognen Teofilovski-REUTERS

 マケドニア旧ユーゴスラビア共和国で、「武装組織」を摘発する作戦中に警官5人が死亡、30人以上が負傷した、とロイターが報じた。

 マケドニア警察の特殊部隊は首都スコピエの北にある町クマノボで先週末、国家機関への攻撃を計画していた外国の「テロ組織」と銃撃戦になったという。

 かつて独立を求めて政府軍と衝突した少数派のアルバニア系ゲリラ「民族解放軍(NLA)」がこの「攻撃」に対する犯行声明を出したが、マケドニア内相は銃撃戦は外国のテロ組織に対する周到な「作戦」の結果だったと説明するなど、主張は食い違った。

 内務省の報道官によれば、テロリストは隣国から違法にマケドニアに入国し、マケドニア国内の支持者に匿われながらテロ攻撃を準備していた。またこの組織の活動拠点は、クマノボでもアルバニア系住民が圧倒的に多い地区にあったという。特殊部隊の突然の乱入に、住民は驚きを隠せずにいる。警察の動機に対する疑問もある。

 ある市民はツイッターでこうつぶやいた。「マケドニア系住民もアルバニア系住民も同様に驚き、お互いに助け合って避難した」

 銃撃戦の前日には、数千人の国民が首都スコピエでデモを行っていた。デモ隊は政府幹部の腐敗や権力乱用、政府内におけるマケドニア系とアルバニア 系の民族対立を批判し、ニコラ・グルエフスキ首相と連立政権の退陣を求めた。

 またグルエフスキ連立政権には最近、4年前の政権発足時に22歳の男性が警察の暴力で死亡したことを政府が隠そうとしていた疑惑が浮上、抗議の火に油を注いだ。

 デモは5月5日から毎日続いていた。デモを支援する野党は、5月17日に大規模なデモを予定している。

 他の大半のバルカン諸国と同様、マケドニアの歴史は民族紛争の歴史だ。とくにクマノボは、2001年のNLAと政府軍との戦闘の中心地。民族対立の過去が反政府活動弾圧の口実にならければいいが。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中