zzzzz

最新記事

パレスチナ

アラファトは83%の確率で毒殺された

殺人容疑で掘り起こされたアラファトの遺体の骨から、通常の18倍以上の濃度の毒物ポロニウムが検出された

2013年11月7日(木)17時01分
サマンサ・ステインバーン

犯人は誰? 不自然なアラファトの死には、以前から毒殺疑惑があった(04年、パレスチナ自治区ラマッラー) Ammar Awad-Reuters

 スイスの科学者チームが、パレスチナ自治政府のヤセル・アラファト前大統領の遺体から採取したサンプルから、ありえないほど高濃度の放射性ポロニウム210を検出した。これはアラファトが毒殺された可能性を裏付けるものだ。

 ポロニウムは放射性同位体で、06年にロンドンで亡くなった元KGB工作員のアレクサンダー・リトビネンコにも使われた毒物だ。

 中東のテレビ局アルジャジーラが伝えるところによると、スイスのローザンヌ大学法医学研究所の調査チームがアラファトの肋骨と骨盤から通常の18倍以上にあたる濃度のポロニウムを検出したことを発表。調査にあたった科学者たちは、83%の確率でポロニウムがアラファトの死因だと確信しているとのことだ。

 アラファトは、04年の10月12日にラマッラーにあるパレスチナ大統領府で食事を摂ったあとに突然吐き気を覚え、嘔吐と腹痛に苛まれた。この直前までアラファトの健康状態は総じて良好だった。容態は改善せず次第に悪化し、数週間後には昏睡状態に陥った。そのままアラファトは11月11日にパリで、原因不明の病気で亡くなっている。

 アラファトの墓が掘り起こされたのは、12年にアルジャジーラが行ったアラファトの死因調査をきっかけにフランスで殺人容疑の捜査が始まったため。

 スイスの調査チームは、検体としてアラファトの遺体から20のサンプルを採取。ほかにフランスとロシアの調査チームもアラファトの遺体から検出したサンプルを検査中だが、その結果はまだ公表されていない。

 イギリスの法医学者デイブ・バークリーは、「スイスの調査結果で、アラファトがポロニウムで毒殺されたことを確信した」とアルジャジーラに語っている。「アラファト毒殺の決定的証拠を見つけた。誰が毒を盛ったのかは分からないが」

 アラファトの妻スーハはガーディアン紙に「死が避けられない運命なのは、皆同じ。でも毒殺となれば話は違う。われわれは、アラファトを失った悲しみに再び襲われている」とコメントした。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:アルゼンチン止まらぬ物価高、隣国の町もゴ

ビジネス

アングル:肥満症薬に熱視線、30年代初頭までに世界

ワールド

イスラエル、新休戦案を提示 米大統領が発表 ハマス

ビジネス

米国株式市場=ダウ急反発、574ドル高 インフレ指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    ロシアT-90戦車を大破させたウクライナ軍ドローン「精密」特攻...戦車の「弱点」を正確に撃破

  • 3

    ヘンリー王子とメーガン妃の「ナイジェリア旅行」...痛すぎる教訓とは?

  • 4

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 5

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 6

    米女性の「日焼け」の形に、米ネットユーザーが大騒…

  • 7

    ウクライナ「水上ドローン」が、ロシア黒海艦隊の「…

  • 8

    1日のうち「立つ」と「座る」どっちが多いと健康的?…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    「同性婚を認めると結婚制度が壊れる」は嘘、なんと…

  • 1

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 2

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 3

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 4

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 5

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 6

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 7

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 8

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中