最新記事

債務危機

ギリシャ緊縮財政でダダ漏れ頭脳流出

2010年6月10日(木)15時22分
イアソン・アサナシアディ(アテネ)

 債務危機に苦しむギリシャでは、緊縮財政の一環として公務員の1年目の月給を600ユーロ(約6万6000円)以下にするという新法案が発表された。これで、高学歴の若者が国を出て他のヨーロッパ諸国やアメリカに職を求める傾向にますます拍車が掛かるだろう。

 マケドニア大学が5月に発表した研究報告によると、外国に留学したギリシャの若者の84%が帰国しない道を選ぶ。うち半数はギリシャでの求職活動さえしなかった。背景には、外国の大学を卒業してもその3分の1がこの国で職に就けないという現実がある。

 18〜30歳の失業率は約25%で、この数字は大学の学位取得者に限ってみても同じ。暇を持て余すアテネの若者たちは昼間からカフェやバーにたむろし、夜になると両親が暮らす家に帰る。彼らは出費がかさむ結婚や出産を避け、30代になっても実家暮らしを続ける。

 ギリシャの若者はヨーロッパで最も学歴が高く最も行き場のない労働者だ。高い学費を払って英米や西ヨーロッパの大学を出て帰国しても家父長的な文化と既得権に縛られた社会構造にぶつかり、実力に見合った収入を得られない。

「この国の深刻な問題の1つであり、国家の成長にも影響を及ぼす」と、パナレトス教育・生涯学習・宗教副大臣も懸念を示す。

GlobalPost.com特約)

[2010年6月16日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

再送ロシア、黒海艦隊司令官の映像公開 ウクライナは

ワールド

国連で香港メディアの自由巡るイベント、中国が各国に

ビジネス

米住宅価格指数、7月の前年比は2カ月連続で伸び加速

ワールド

中国恒大の一部オフショア債権者、清算申し立てに参加

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:日本化する中国経済

特集:日本化する中国経済

2023年10月 3日号(9/26発売)

バブル崩壊危機/デフレ/通貨安/若者の超氷河期......。失速する中国経済が世界に不況の火種をまき散らす

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    中央アジアでうごめく「ロシア後」の地政学

  • 2

    これぞ「王室離脱」の結果...米NYで大歓迎された英ウィリアム皇太子、弟夫婦が受けた扱いとの違いは歴然

  • 3

    西日本最大級のグルメイベント「全肉祭」 徳島県徳島市にて10/20~10/22に第4回開催決定!

  • 4

    「ケイト効果」は年間1480億円以上...キャサリン妃の…

  • 5

    「中流階級」が50%以下になったアメリカ...縮小する…

  • 6

    中国高官がまた1人忽然と消えた...中国共産党内で何…

  • 7

    「可愛すぎる」「飼いたくなった」飼い主を探して家…

  • 8

    横暴中国、バリアーを張って南シナ海のフィリピン漁…

  • 9

    「クレイジーな誇張」「全然ちがう」...ヘンリーとメ…

  • 10

    広範囲の敵を一瞬で...映像が捉えたウクライナ軍「ク…

  • 1

    マイクロプラスチック摂取の悪影響、マウス実験で脳への蓄積と「異常行動」が観察される

  • 2

    常識破りのイーロン・マスク、テスラ「ギガキャスト」に「砂」活用し他社引き離す

  • 3

    最新兵器が飛び交う現代の戦場でも「恐怖」は健在...「スナイパー」がロシア兵を撃ち倒す瞬間とされる動画

  • 4

    これぞ「王室離脱」の結果...米NYで大歓迎された英ウ…

  • 5

    「ケイト効果」は年間1480億円以上...キャサリン妃の…

  • 6

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗…

  • 7

    「この国の恥だ!」 インドで暴徒が女性を裸にし、街…

  • 8

    J.クルーのサイトをダウンさせた...「メーガン妃ファ…

  • 9

    ロシアに裏切られたもう一つの旧ソ連国アルメニア、…

  • 10

    「クレイジーな誇張」「全然ちがう」...ヘンリーとメ…

  • 1

    イーロン・マスクからスターリンクを買収することに決めました(パックン)

  • 2

    墜落したプリゴジンの航空機に搭乗...「客室乗務員」が、家族に送っていた「最後」のメールと写真

  • 3

    <動画>ウクライナのために戦うアメリカ人志願兵部隊がロシア軍の塹壕に突入

  • 4

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗…

  • 5

    コンプライアンス専門家が読み解く、ジャニーズ事務…

  • 6

    「児童ポルノだ」「未成年なのに」 韓国の大人気女性…

  • 7

    サッカー女子W杯で大健闘のイングランドと、目に余る…

  • 8

    「これが現代の戦争だ」 数千ドルのドローンが、ロシ…

  • 9

    「この国の恥だ!」 インドで暴徒が女性を裸にし、街…

  • 10

    ロシア戦闘機との銃撃戦の末、黒海の戦略的な一部を…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中