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0歳からの教育

新生児がパパ・ママの表情に関して持つ知識は、学習にとって極めて貴重なツール

Special Faces

2021年11月26日(金)15時20分
バネッサ・ローブ(ラトガーズ大学心理学准教授)

笑い顔、怒った顔……赤ちゃんは大人の表情を見て急速に学び、自分の行動の参考にする RAWPIXEL-ISTOCK

<研究によれば、大人の顔を見て赤ちゃんは感情を学び、行動に役立てる。一方で、異なる人種などなじみのない顔については認識する力が失われていく>

顔と、そこに浮かぶ表情は、私たち人間にとって特別な力を持っている。

優しくて人懐こい顔を前にすれば、親しみを感じて心が和む。一方、敵意を示す人の顔を見れば、不安や怒りを感じる。

では、子供は一体いつ、顔と表情を認識する方法を身に付けるのだろうか。

赤ちゃんにとってその表情が大きな情報源になる親が、知っておくべきことは何だろうか。

新生児は、誕生後わずか数時間で、母親の顔を明らかに好むようになる。

数十年前から各地で実施されてきた研究では、新生児が顔を非常に特別なものとして捉えていることが示されている。

ある研究チームはそれを実証するため、生後たった9分の新生児40人に、顔の画像か、もしくはモザイクがかけられた顔の画像が表示されたパネルを見せた。さらにパネルを視界内で動かしたところ、新生児はモザイクよりも顔の画像のほうを長く目で追っていた。

新生児は、誕生から数時間で母親の顔と他人の顔を的確に区別できるようになる。

そしてほんの数日のうちに、顔に浮かんだ感情を見分けるすべを身に付ける。例えば、幸せな顔や悲しい顔、驚いた顔を区別できるようになる。

その後数カ月で、新生児はなじみのある顔をより明確に見分けるようになる。顔は、新生児にとってお気に入りの刺激になるのだ。

顔に対するこうした反応は、その後も発達し続ける。

5カ月になる頃には、感情が浮かんだ表情(悲しい顔)と、それに関連した声の調子(悲しい声)を一致させられる。

5歳にもなると、表情を認識して分類する能力は、たいていの大人と同程度に近づく。

しかし、新生児がそれほど速やかに表情を読み取れるようになるメカニズムは、まだ解明されていない。

新生児は誕生直後から顔を選好する生物学的傾向を持っているという主張もあれば、生まれてすぐに数々の顔を目にすれば高速学習が促されるのは当然だという意見もある。

表情に関して新生児が持つ知識は、生後6~12カ月の学習にとって極めて貴重なツールとなる。

赤ちゃんは8~12カ月頃までに、ほかの人、特に母親の顔から得られる情報が「役立つ」ということを学ぶ。初めて直面する場面において、ほかの人の表情が、自分がどう行動すべきかを探り出す助けになることを学習するのだ。

例えば、はいはいをしたり、歩き始めたりする時期の赤ちゃんは、危険と思われるスロープの前に来たときに、母親の顔を見て手掛かりを探そうとする。

赤ちゃんがスロープを下りようとするのは、母親が励ますような笑みを浮かべたときだけ。行っちゃダメ、と母親が表情で示す場合には、進もうとしない。

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WONDER VISUALS-ISTOCK

なじみのない顔は認識低下

異なる顔や表情を見極める能力の速やかな発達は、赤ちゃんにとって非常に有益だ。

一方で、特定の顔に対する好みが強まったり、一部の顔を認識する力が成長しなかったりすることにもつながる。

例えば、誕生直後の新生児は、大人にとっても「魅力的でない」顔より、大人も「魅力的」と判断するような顔のほうを好む。

1歳を過ぎると、より魅力的な顔を持つ人のそばでは違う態度を見せることすらある。魅力がある大人のほうに笑い掛けたり、一緒に遊ぶのを好んだりするようになるのだ。

さらに驚くことに、3カ月の赤ちゃんは、自分と同じ人種の顔を好む。そして9カ月くらいになると、異なる人種の人々の顔を見分けにくくなる。

研究者はこうした現象を「知覚的狭小化」と呼ぶ。つまり、新生児の脳は、誕生直後から非常に柔軟で、多種多様な顔を(さらには人間ではない動物の顔すらも)見分けることができる。

しかし、最も頻繁に目にする顔を的確に認識できるようになる一方で、異なる人種などなじみのない顔については、認識する力が失われていく。ただし、異なる人種の人に日頃から接していれば、そうした影響は回避できる。

子供の世界が不確実さに満ちていることを考えれば、最もなじみのある顔は、何が安全で何が危険か、何が喜びをもたらし何が恐怖心をもたらすかについての重要な情報源だ。

さらに赤ちゃんが、どんな表情であれ、それを読み取る力にたけていることについては、心に留めておいたほうがいいだろう。

つまり、クモに悲鳴を上げたり、誰かを罵ったり、うっとうしい親戚に会うようなときには、注意したほうがいいということだ。

幼いわが子のそばにいるとき、あなたは親としてどのような表情をしていたいと思うだろうか。これは、じっくり考える価値のある問いかもしれない。

The Conversation

Vanessa LoBue, Assistant Professor of Psychology, Rutgers University - Newark

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

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