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VRで英語を学ぶ? 海外で暮らすような仮想体験ができる学習法

2019年04月26日(金)17時15分
寺町幸枝

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たとえば旅先にいるというシーン設定で教師とコミュニケーションする Photo:Immerse(C)

アバターを使うことで不安感が低くなる効果

イマースではあえて、生徒の実際の写真や映像ではなく、仮想空間での分身となるキャラクター、つまりアバターを使ったプラットフォームを用いる。その理由の一つは、アバターを使うことによって学習者の不安感を少なくする情意フィルター効果だという。

「講師も生徒も、自分のアバターを自由に変化させることができる。言語学者のスティーブン・クラッシェンが説いた情意フィルター仮説を裏付けるように、最初はイエス、ノーといった返答しかしなかった生徒でも、実際の自分ではなくアバターでコミュニケーションすることで不安が軽減するようで、次第に流暢な英語を使えるようになっている」とテーバー氏。

実際、大人にも人気のシナリオは「海賊船」だ。非現実的でユニークなシーン設定のおかげで、緊張感がほぐれ、間違えを犯すことへの不安が払拭され、自然と会話が進む。

イマースは現在企業向け、個人向けのサービスを提供中だ。「最低でも8週間続けないと効果が見えにくい」とのことで、現在8週、12週、16週の3つのコースを設定している。16週間あると安定した成果が見込めるという。

なおビジネスパーソン向けのスタンダードなプログラムは、2〜5人のグループで16週間学ぶコースで1300ドルから。

今後は、英語のリリースに続き中国語、フランス語、アラビア語、ドイツ語、スペイン語のリリースを予定している。特にアラビア語のプログラムにおいては、テーバーが両親から引き継いだフィランソロピー(社会貢献活動)的考えに基づいている。

VRプラットフォーム学習では生徒も講師も居場所は自由だ。オンライン環境さえ揃えば、世界のどこにいても構わない。そのため、テーバーはアラビア語のレッスンを構築することで、シリア難民たちに定職を与えることができないかと考えているという。

例えAIによる自動翻訳が進んでも、人間が生きていく上で、直接的なコミュニケーションへのニーズがなくなることはなく、さらに語学習得だけに限らず、イマースの提供するプラットフォームは、地理的な距離を縮めるための、ツールになる可能性がある。

「大人向けの学習だけではなく、今後は子どもたちにもVRを使った語学習得プログラムをもっと提供したい」と話すテーバー。VRを利用し学ぶことで、互いの言葉を話し、文化や習慣への理解が深まれば、次世代にはもっと紛争や社会問題を解決できるきっかけが生まれるかもしれない。

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