最新記事

米外交

オバマの「日本冷遇」は誰も責めない

イランや中国のような対立相手よりイスラエルやインドのような同盟国に冷たいとオバマを批判する保守派が、日本には言及もしないのはなぜ?

2010年4月22日(木)17時29分
ダニエル・ドレズナー(米タフツ大学フレッチャー法律外交大学院教授)

そっぽ 核サミットでの日米首脳会談は夕食の席での10分だけだった(4月12日、ワシントン) Jason Reed-Reuters

 ジョン・ボルトン元国連大使らの米保守派が外交政策で執拗に批判しているのは、バラク・オバマ大統領がアメリカと対立している国より同盟国に冷たい、ということだ。

 彼らに言わせれば、オバマはイランよりイスラエルに冷たいし、中国よりもインド、ロシアよりも東欧諸国に冷たいという。

 そうした批判の多くは誇張されている。どう考えても、アメリカがイスラエルよりイランを厚遇しているなどと言えるはずがない。オバマの現実主義的な外交戦略が具体化してきたために不満が湧き出た面もあるだろう。

 それでも、私がすぐに3つの例を思いつけたのは、保守派の言い分にも一理あるからだろう。面白いのは、オバマが冷遇している同盟国の例として誰も日本を挙げないことだ。

 ちょっと驚きだ。日本は先に挙げたどの国より古い同盟国で、極めて重要な国なのだから。英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙によると、最近の日米関係は問題だらけで危機にさらされている


 日本政府は米軍普天間飛行場の移設問題を自ら設定した5月末の期限までに決着するため「苦闘」していると、岡田克也外相は言う。

 岡田は本紙の取材に対し、政権発足後7カ月の民主党連立政権は日米同盟を重視しており、米政府も納得する普天間飛行場の移転先を見つける決意だと主張した。

 だが、それが可能かどうか鳩山由紀夫首相には「自信がない」とも岡田は言う......。

 民主党が普天間飛行場を沖縄県外に移転することにこだわり、アメリカとの「より対等な関係」を求めるのは、50年間続いた日本の対米重視姿勢が弱まっている証拠ではないかと米政府は懸念する......。


大統領のせいではない

 こんな有り様なのに、なぜオバマは「日本冷遇!」と集中砲火を浴びないのだろう。それには、2つの理由があると思う。

1)責任はどう見ても鳩山政権にある。FT紙によれば、日本政府は外交上かなりの失策を犯している。

2)オバマ政権は、鳩山政権より右寄りである(つまり、米保守派から見て鳩山政権はオバマ政権よりさらに左寄りである)。

 保守派が不誠実だと言うつもりはない。ただ、オバマが冷遇し過ぎていると彼らが言う同盟国がすべて、保守政党が政権を握っている国だという点にはご都合主義も感じる。

 もちろん、それは共和党に限った話ではない。例えば民主党はかつて、シュレーダー首相率いるドイツの左派政権に冷たいとジョージ・W・ブッシュ政権を批判したことがある。

 結局のところ、時おり持ち上がる同盟国とのごたごたは、大統領のせいというより、半永久的な同盟関係に内在する緊張要因と時代ごとの利害の変化によるものだ。

[米国東部時間2010年04月20日(火)21時35分更新]

Reprinted with permission from Daniel W. Drezner's blog, 22/04/2010.©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米アトランタ連銀総裁、インフレ進展停滞なら利上げに

ビジネス

3月全国消費者物価(除く生鮮)は前年比+2.6%=

ワールド

パレスチナ国連加盟、安保理で否決 米が拒否権行使

ビジネス

スペースXの米スパイ衛星網構築計画、ノースロップが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中