最新記事

音楽

ジャズ新世代の歌姫たち

国籍も文化的背景もさまざまな若手が、アメリカのジャズを生まれ変わらせる

2009年11月13日(金)13時24分
アンドルー・バスト、アニータ・カーパラニ

新世代の星 多様な文化を引き継ぐスポルディングは、ジャズをスペイン語やポルトガル語で Jason ReedーReuters

 かつてはジャズ歌手といえば、たばこの煙の漂う部屋でセレナーデを歌うアフリカ系アメリカ人女性というイメージだった。ビリー・ホリデイしかり、エラ・フィッツジェラルドしかり。

 だが近頃、新たなジャズ歌手の系譜をつくっているのは生まれた国もさまざまな若き歌姫たちだ。多様な文化的背景を持つ彼女たちは、アメリカの伝統的なサウンドであるジャズに新鮮なエネルギーを吹き込んでいる。

 例えば、最近人気急上昇中のソフィー・ミルマン(26)はロシア生まれ。7歳で家族と共にイスラエルに、そして16歳のときにカナダに移り住んだ。東京でのライブチケットが完売するなど、ルーツだけでなく活躍の場も世界的だ。容貌はもちろん、フランス語と英語、ロシア語にヘブライ語を流暢に操るあたりも、半世紀以上前の大先輩たちとは大きく異なる。

 ミルマンのような若手たちは、アメリカのスタンダード・ジャズという枠を大切にしつつ、そこに新たなページを書き加えている。

アメリカ音楽の伝統守る

 ジャズ評論家のスコット・ヤノーは著書『ジャズ歌手たち』で、21世紀のジャズ歌手のなかで「定番の曲を新たに作り変えることができるのは一握り」にすぎないと述べている。ミルマンたちがやっているのはまさにそのこと。彼女は、コール・ポーターの「ラブ・フォー・セール」を、澄んだ素晴らしいアルトの声で歌っている。

 ギリシャとギニアの血を引くエリザベス・コントマノウは、ジャズのルーツがアフリカ系アメリカ人にあることをきちんと理解すべきだと言う。「ジャズは革新の音楽だけど、それは深い文化的背景や、ジャズがこれまでに成し遂げてきたものを理解した上でのこと」と彼女は言う。「それと向き合わないことには、無味乾燥な音楽ができてしまう」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

原油先物は続伸、イランがイスラエル攻撃準備との報道

ビジネス

インテル、第4四半期売上高見通しが予想上回る 株価

ビジネス

アップル、見通しさえず株下落 第4四半期は予想上回

ワールド

米裁判所、マスク氏訴訟の手続き保留を決定 大統領選
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米大統領選と日本経済
特集:米大統領選と日本経済
2024年11月 5日/2024年11月12日号(10/29発売)

トランプ vs ハリスの結果次第で日本の金利・為替・景気はここまで変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後はさらなる「倒産増加」が予想される
  • 2
    「まるで睾丸」ケイト・ベッキンセールのコルセットドレスにネット震撼...「破裂しそう」と話題に
  • 3
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符を打つ「本当の色」とは
  • 4
    脱北者約200人がウクライナ義勇軍に参加を希望 全員…
  • 5
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 6
    北朝鮮軍とロシア軍「悪夢のコラボ」の本当の目的は…
  • 7
    天文学者が肉眼で見たオーロラは失望の連続、カメラ…
  • 8
    中国が仕掛ける「沖縄と台湾をめぐる認知戦」流布さ…
  • 9
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 10
    自爆型ドローン「スイッチブレード」がロシアの防空…
  • 1
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 2
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 3
    キャンピングカーに住んで半年「月40万円の節約に」全長10メートルの生活の魅力を語る
  • 4
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符…
  • 5
    2027年で製造「禁止」に...蛍光灯がなくなったら一体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語ではないものはどれ?…
  • 7
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 8
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後…
  • 9
    「決して真似しないで」...マッターホルン山頂「細す…
  • 10
    【衝撃映像】イスラエル軍のミサイルが着弾する瞬間…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 8
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 9
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 10
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中