最新記事

宇宙

これが天の川銀河の中心だ 観測データのパノラマが公開される

2021年6月3日(木)21時00分
松岡由希子

20年以上にわたる観測データをつなぎ合わせた(NASA/CXC/UMass/Q.D. Wang; NRF/SARAO/MeerKAT)

<超大質量ブラックホールが存在し、非常に観測しづらい天の川銀河の中心の、20年以上にわたる観測データをつなぎ合わせたパノラマが公開された>

天の川銀河の中心には、太陽質量の約400万倍の質量を持つ超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」が存在し、その重力や磁場に支配されて極限環境になっていると考えられている。

この領域は、地球からの距離が2万5800光年と比較的近くにありながら、塵やガスの厚い雲に覆われているため、非常に観測しづらい。

20年以上にわたる観測データをつなぎ合わせた

このほど、アメリカ航空宇宙局(NASA)のチャンドラX線観測衛星と南アフリカ共和国のミーアキャット(MeerKAT)電波望遠鏡の20年以上にわたる観測データをつなぎ合わせた天の川銀河の中心のパノラマが公開された。

チャンドラX線観測衛星からのX線は、オレンジ、緑、青、紫と、様々なエネルギーを表わし、ミーアキャット電波望遠鏡の電波データは薄紫色と灰色で示されている。

gcenter-2021.jpg(NASA/CXC/UMass/Q.D. Wang NRF/SARAO/MeerKAT)

「磁場の細い帯によってX線放射と電波放射が絡み合っている」

なかでも関心を集めているのが、X線放射と電波放射が絡み合った、長さ約20光年、幅0.2光年の細長い糸状のガス「G0.17-0.41」だ。

thread.jpgG0.17-0.41. (NASA/CXC/UMass/Q.D. Wang; NRF/SARAO/MeerKAT)

この糸状のガスを分析した米マサチューセッツ大学アマースト校の天文学者ダニエル・ワン教授は、学術雑誌「王立天文学会月報」(2021年6月号)に掲載された研究論文で、「磁場の細い帯によってX線放射と電波放射が絡み合っている」と示唆し、「このような帯は、『磁気リコネクション(磁気再結合)』と呼ばれる物理過程で、磁場が異なる方向に整列し、衝突し、互いに絡み合ったときに形成された可能性がある」と述べている。

磁気リコネクション現象のほとんどはX線では微弱、もしくは拡散しすぎるため、既存の観測方法では検出されづらい。ワン教授は、G0.17-0.41について「磁気リコネクション現象が続いている証拠だ」との見解を示したうえで、「磁気リコネクション現象の氷山の一角をとらえたものにすぎないだろう」と指摘している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

台湾議会の権限強化法案、頼政権は再審議要求へ

ビジネス

午後3時のドルは157円前半で底堅い、一時1カ月ぶ

ワールド

米コノコがマラソン・オイル買収へ協議、評価額150

ビジネス

日経平均は続落、国内金利の上昇が重し 保険株は底堅
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 2

    メキシコに巨大な「緑の渦」が出現、その正体は?

  • 3

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 4

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    プーチンの天然ガス戦略が裏目で売り先が枯渇! 欧…

  • 7

    汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 10

    「天国に一番近い島」で起きた暴動、フランスがニュ…

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 6

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中