最新記事
海洋生物

ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」

Scientists Discover Creature With ‘All-Body Brain’

2025年11月14日(金)19時00分
イアン・ランドル(科学担当)
「全身が脳」の生物のイメージ

「全身が脳」かもしれないのは、我々もよく知る生物だ Generated by AI

<今まで「脳がない」と思われていた生物。実は脳がないのではなく「全身が脳」だった>

万物の霊長である人類でも、脳は体重の2~3%を占めるに過ぎない。しかし、欧州の研究チームは「全身が脳」という、俄かには信じがたい生物が存在することを発見した。

【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態


欧州の研究チームによれば、この生物の神経系はヒトのような脊椎動物の脳と似た遺伝的構造を持っていることが分かったという。全身には驚くほど複雑な中枢神経系が備えられており、本質的には「全身脳」として機能している。まるで全体が「頭部」でできているかのようだ。

「従来型の中枢神経系を持たない動物であっても、脳のような構造を発達させ得る」と、ベルリン自然史博物館の生物学者ジャック・ウルリッヒ・リューターは述べた。

「複雑な神経系の進化をどう捉えるかという点で、根本的な転換を迫る発見だ」

ウルリッヒ・リューターらのチームが研究対象にした「全身脳」生物は「Paracentrotus lividus」、つまりヨーロッパムラサキウニだ。ウニの他、ヒトデ、ナマコ、クモヒトデなどが属する棘皮動物門には、成長するにつれて体の対称性が変化するという特徴がある。

例えば、人間の身体は「左右対称」であり、体を左右二つに分けると、左右は相称(概ね対称)となる。実際、全動物種の99パーセントにあたる100万種の動物がこの特徴を持っており、「左右相称動物」と大きく分類されている。

もちろん、左右相称動物であっても、非対称の部分は存在する。例えば、人間の心臓は胸の中央よりやや左にあり、肝臓は主に右側に位置している。

ガジェット
仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、モバイルバッテリーがビジネスパーソンに最適な理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、米特使らと電話会談 「誠実に協力し

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

ガザ交渉「正念場」、仲介国カタール首相 「停戦まだ

ワールド

中国、香港の火災報道巡り外国メディア呼び出し 「虚
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 10
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中