最新記事
BOOKS

近しい人を見送るとき...母の最期に立ち会えなかった作家が「最期に立ち会えなくても大丈夫」と思えた理由

2025年4月30日(水)16時30分
尾崎英子
雑踏で鳴るスマホ

母の旅立ちには間に合わなかった(画像はイメージです):nvtrlab_pixabay

<「最期の瞬間はそれぞれ自分で決めているように思う」と終末医療に携わる姉は言った>

大切な人の看取りには正解がない。それゆえ何かと後悔を残しがちだ。作家の尾崎英子氏の場合、母の最期の瞬間に立ち会うことができなかった。しかし後悔はなく、その日を迎えるまでかけがえのない時間を過ごすことができたという。

『母の旅立ち』(CEメディアハウス)は、四人姉妹と父が、在宅で母を看取り家族葬で送った記録である。知人や友人から看取りの経験について聞かれることが増える年齢になった今、自分の経験が少しでも人の気持ちを軽くできればという思いで綴った。

「わたしの姉は在宅医療の専門医で、その知見を事前にシェアしてくれました。多くの方の死を経験するなかで、最期の瞬間はそれぞれ自分で決めているように思えるから、立ち会えなくても後悔することはないと。おかげで動揺する心をずいぶん落ち着けることができた。自分が救われたから、わたしも友人に聞かれたときは自分の経験を話します。笑ってくれて、イメージを持つことができたと言ってもらえると、ほっとします」

同書を執筆するきっかけとなったエッセイ「母、シリウスに帰る」を掲載する。

◇ ◇ ◇

正月、母の病気を又聞きで知った

パイナップルの日に、母はこの世を去った。 八月十七日。母がパイナップルを食べていた姿を思い出すことはできないが、なんとなく、母とパイナップルは似ていると思う。

母の病気が見つかったのは、2016年の晩秋だった。しかし病状を母から聞かされていたのは父と長女だけで、わたしと次女と三女が知ったのは、年末年始のバタバタの最中だった。あけましておめでとうの挨拶を交わした三女との電話で、わたしはまるで伝言ゲームみたいな又聞きで、その事実を知らされたのだった。

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インドが空軍基地3カ所を攻撃、パキスタン軍が発表

ワールド

アングル:ロス山火事、鎮圧後にくすぶる「鉛汚染」の

ワールド

トランプ氏、貿易協定後も「10%関税維持」 条件提

ワールド

ロシア、30日間停戦を支持 「ニュアンス」が考慮さ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノーパンツルックで美脚解放も「普段着」「手抜き」と酷評
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 5
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 6
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 7
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 8
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 9
    「金ぴか時代」の王を目指すトランプの下、ホワイト…
  • 10
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 10
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中