最新記事
食育

「見た目重視」ばかりの食事は好ましくない...「飲食店テロ」の原因にも?

2024年4月25日(木)11時40分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
犬のキャラ弁おにぎり

subarasikiai-Pixabay

<SNSを目的とした食事が子供に及ぼす影響について。飲食店での迷惑行為との関係も>

食べ渋り、食べるスピード、偏食、好き嫌い、こだわり、栄養の偏り...。子どもの食体験は、彼らが抱える課題や生きにくさや学校でのトラブルとも密接に関連している。

大人はどのように子どもの食事における課題に向き合うことができるのか。『児童精神科医が教える こころが育つ! 子どもの食事』(CCCメディアハウス)の第1章「『普通に食べる』が難しい子どもの存在」より一部抜粋する。

◇ ◇ ◇

飲食店テロに見る子どもの食体験とSNSの影響

最近では、某回転寿司チェーン店で、醤油さしを舐めたり寿司に唾液をつけたりした未成年の少年たちが逮捕され送検された事件がありました。これも食に絡んだ子どもの問題の一つと言えます。

これまで飲食店におけるトラブルといえば、無銭飲食や反社会的組織によるみかじめ料の問題、客や店主の粗暴行為、食材の産地偽装、食材偽装、消費期限偽装、食中毒などが知られてきました。

しかし近年、スマホの普及から、客が迷惑行為を行い、その様子を自身や周囲の人間が動画や写真を撮ってSNSに投稿するといった「飲食店テロ」と呼ばれる行為も加わったと言えます。

先の事件に関わった少年たちは「回転寿司店で面白いことをしたいと考えた」らしいですが、こういった逮捕されるケースまで至らなくとも、みなさんもSNSが絡んだ飲食店での迷惑行為を身近に感じることがあるのではないでしょうか。

おしゃれな飲食店に行き、豪華な食事を目の前にすると、ついスマホで写真を撮りたくなってしまうかもしれません。

大切な食事を思い出に残しておきたい、この感動を誰かに伝えたいといった気持ち自体は自然な感情だと思います。私の高齢の母でさえも、外食では食べる前に写真を撮りたがります。

しかし、写真を撮ることに夢中になり肝心の料理が冷めてしまった、味に集中できなかった、見映えを重視し過ぎて量を頼み過ぎた、などの理由でいわゆる「映える」写真だけを撮って、料理そのものを食べなかったり、ほとんど残してしまったりすることになると、それだけで飲食店への迷惑行為にもなりかねません。

その根底には、「お金さえ払えばたとえ食べ物を粗末にしても文句はないだろう」という考えさえ、透けて見えてしまいます。

「食べたくても食べられない人たちがいる」という言葉は、おそらく誰もが子どもの頃から何度も聞かされていて、「何をいまさら」と思われる方も多いかと思いますが、欠食で苦しんでいる子どもの姿を思い浮かべますと、その真の意味を理解して子どもたちに教えつつ、食を心から楽しんでもらうことは本当に難しいことだと考えます。

「見た目が9割」という言説は食も例外ではなく、飲食店以外の日常の食事でもこうした考えが浸透しつつあります。例えばキャラ弁です。子どもに少しでも喜んでほしいという親の思いもありますし、手間がかかるので親の愛情がぎっしりと詰まった弁当のようにも見えます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

デンマーク、ロシア産原油輸送の「影の船団」阻止を検

ワールド

ロシア拘束の米記者、スパイ容疑の審理非公開で実施 

ワールド

NATO加盟20カ国超、24年に国防費2%目標達成

ワールド

米印、貿易や産業協力の障壁巡り対応へ 「技術流出防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:サウジの矜持
特集:サウジの矜持
2024年6月25日号(6/18発売)

脱石油を目指す中東の雄サウジアラビア。米中ロを手玉に取る王国が描く「次の世界」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新型コロナ変異株「フラート」が感染拡大中...今夏は「爆発と強さ」に要警戒

  • 2

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆発...死者60人以上の攻撃「映像」ウクライナ公開

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    中国「浮かぶ原子炉」が南シナ海で波紋を呼ぶ...中国…

  • 5

    水上スキーに巨大サメが繰り返し「体当たり」の恐怖…

  • 6

    なぜ日本語は漢字を捨てなかったのか?...『万葉集』…

  • 7

    中国経済がはまる「日本型デフレ」の泥沼...消費心理…

  • 8

    ジョージアはロシアに飲み込まれるのか

  • 9

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…

  • 10

    長距離ドローンがロシア奥深くに「退避」していたSU-…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 5

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 6

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…

  • 7

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 10

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 8

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 9

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 10

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中