最新記事
健康

健康長寿の一歩、年齢に負けず「長く続けるための」ウォーキング術

Watch Your Step

2024年3月8日(金)18時04分
パンドラ・デワン
教えて、「1日1万歩」のウソホント

短い散歩に1日数回出るなどして、座りっぱなしの時間を減らすのが大事 MOLCHANOVDMITRY/ISTOCK

<歩くことが心身の健康に効果的なのは知っているが、実際にはどれだけ歩けばいいのか? 歩き方の秘訣や歩行量の目安を運動生理学の専門家に聞く>

1日1万歩のウオーキングが健康維持の「常識」とされて久しい。

けれども、この数字はどこから来たのか。そもそも本当に正しいのか。


毎日の歩行量を増やすことで心身の健康にメリットがあるのは間違いないと、専門家は言う。

「ウオーキングの歩数を伸ばすなどして運動量が増えれば、心血管機能の改善、体重管理、メンタルヘルスや睡眠の質の向上、認知機能の強化につながる」と、英ハートフォードシャー大学のリンジー・ボトムズ准教授は語る。

「ウオーキングには、認知症のような慢性疾患や一部の癌の発症リスクを抑える効果が期待できる。2型糖尿病などの改善にも役立つ場合もある」

では、そうした恩恵にあずかるためには、一定の歩数をクリアしなければならないのか。運動と健康に関する生理学が専門のボトムズに、ウオーキングにまつわる疑問をぶつけた。

◇ ◇ ◇


■そもそも「1万歩」の数字はどこから?

「1965年に日本の歩数計メーカー、山佐時計計器が発売した商品が由来らしい」と、ボトムズは言う。

「その商品は『万歩計』と言い、『万歩』は日本語で1万歩を意味する。これが広まり、1日に達成すべき歩行量の目標として世界中で定着したのだろう」

■1万歩では足りないって本当?

運動はどんなものであれ免疫力を高め、心の健康を改善してくれる。

ウオーキングはシンプルでどこでもできるのが、大きなメリット。

年齢を問わず手軽に生活に取り入れられて、健康増進に効果のあるエクササイズだ。

欧州予防循環器学会(EAPC)の機関誌に昨年掲載された論文によれば、1日に2337歩以上歩くことで心血管疾患による死亡リスクが減少した。

1日に3967歩では、死因を問わず全ての死亡リスクが低下した。

米国医師会報(JAMA)の神経科専門誌に2019年に発表されたアルツハイマー病に関する論文は、発症リスクの高い人も1日8900歩程度歩くことで認知機能の低下と脳萎縮を遅らせられるかもしれないと結論付けた。

一方で、健康維持のためには1日2万歩を目指すべきだとの声もある。

だが、心臓の健康に最適な効果を得るには1万歩さえ必要ないとの研究結果もあると、ボトムズは指摘する。

むしろ多くの人がチャレンジできるように、目標は低めに設定したほうがいい、というのが、ボトムズの考え方だ。

「2万歩を目指すのを止めるつもりはないが、一般的な目標はもっと低く設定したほうがいい。達成できない目標を課しても、やる気をくじくだけだ」

「歩行量が7500~8500歩を超えるあたりから死亡リスクにも心血管疾患の発症リスクにも変化が見られなくなると、複数の研究が示している。また、約4400歩のウオーキングを一定期間続けることで女性の死亡率が下がったという研究結果もある」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾との平和的統一の見通し悪化、独立「断固阻止」と

ワールド

北朝鮮、韓国に向け新たに600個のごみ風船=韓国

ワールド

OPECプラス、2日会合はリヤドで一部対面開催か=

ワールド

アングル:デモやめ政界へ、欧州議会目指すグレタ世代
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「肖像画ドレス」で歴史に名を刻んだ、プリンセス御用達

  • 3

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...すごすぎる日焼けあとが「痛そう」「ひどい」と話題に

  • 4

    ウクライナ「水上ドローン」が、ロシア黒海艦隊の「…

  • 5

    ヘンリー王子とメーガン妃の「ナイジェリア旅行」...…

  • 6

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 7

    ロシアT-90戦車を大破させたウクライナ軍ドローン「…

  • 8

    1日のうち「立つ」と「座る」どっちが多いと健康的?…

  • 9

    米女性の「日焼け」の形に、米ネットユーザーが大騒…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 4

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 5

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 6

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 7

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 8

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 9

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中