最新記事
ヘルス

ビッグサンダーマウンテンで尿路結石が出る!? イグノーベル賞受賞の方法以外には乗馬やヨガなどの画期的治療法も

2023年11月24日(金)16時20分
中尾篤典(医師)・毛内 拡(脳神経科学者) *PRESIDENT Onlineからの転載
ジェットコースターで悲鳴を上げる女性たち

*写真はイメージです Jacob Lund - shutterstock


アメリカ宇宙局(NASA)や軍隊で任務中の発作を予防するために膨大な予算をかけ研究が行われている尿管結石。岡山大学医学部の中尾篤典教授が、その画期的な治療法を見つけようと米国の大学が手掛けたビッグサンダーマウンテンの研究結果(2018年にイグノーベル医学賞を受賞)を紹介する――。

※本稿は、中尾篤典・毛内拡(著)、ナゾロジー(協力)『ウソみたいな人体の話を大学の先生に解説してもらいました。』(秀和システム)の一部を再編集したものです。

おしっこにまつわる謎・尿管結石の新しすぎる治療法

少し汚い話ですが、おしっこと膀胱(ぼうこう)の話です。

尿管結石は、腎臓から膀胱までの尿が通る管の中に石ができる病気です。石が詰まることで腎臓で作られた尿が出なくなり、腎臓が腫れて大変な痛みが出ます。救急外来でよく見られるありふれた疾患で、ライフスタイルや遺伝等も影響するといわれていますが、実は未だにはっきりとした原因はわかっていません。

その痛みは激烈で、原因としては骨から溶け出したカルシウム成分や脱水、長時間の同じ姿勢、激しい運動などが推測されています。アメリカ宇宙局(NASA)①や軍隊②では任務中の尿管結石を予防するために膨大な予算で研究が行われているそうです。

図表1 ジェットコースターと尿管結石

アメリカにはオーランドのディズニーランドでビッグサンダーマウンテンに乗った後で尿管結石が出てきた、と自慢する患者さんが多くいるようです。

これが本当なら、画期的な治療法が見つかるかもしれない、と自らジェットコースターに乗って尿管結石を治療するという研究を真面目にやった人たちがいます。

2016年にミシガン州立大学の研究者たちが発表した論文③によれば、研究グループは患者さんから実際に出た3つの異なる大きさの結石を用意し、その結石をシリコンで作った腎臓のリアルな模型に入れさらにそれをバックパックに入れ、ビッグサンダーマウンテンに自ら20回ずつ乗り込んで実験しています。

最初は模型ではなく、牛や豚の腎臓を使っていたそうですが、家族で楽しむアミューズメント施設には不適切だということで、許可されなかったそうです。結果は、先頭座席では排石率が12.5%前後であったのに対し、最後部では63.9%の結石が出たそうです。結石は5mm以上の大きさになると、痛みや疼痛が出たり、手術が必要になってきたりしますが、研究グループはジェットコースターにより、この大きさになる前に石を取り除くことができると主張しています。

このほかにも、乗馬や、インドに伝わる特殊なヨガがいいという報告④もあります。いずれも尿路が揺さぶられ、振動やGの力を利用して石を動かし、通過を促進して石を出すという考え方です。ちなみに、このビッグサンダーマウンテンの研究は2018年にイグノーベル医学賞を受賞したそうです。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米5月PPI、前月比0.2%下落 昨年10月以降で

ビジネス

米新規失業保険申請、1.3万件増の24.2万件 1

ワールド

ドイツ連立与党、国民の不満が過去最高=世論調査

ビジネス

スリランカ向け支援、IMFが2回目の審査承認 経済
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を締め上げる衝撃シーン...すぐに写真を撮ったワケ

  • 4

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 5

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 6

    国立新美術館『CLAMP展』 入場チケット5組10名様プレ…

  • 7

    長距離ドローンがロシア奥深くに「退避」していたSU-…

  • 8

    ジブリの魔法はロンドンでも健在、舞台版『千と千尋…

  • 9

    ウクライナ軍がロシアのSu-25戦闘機を撃墜...ドネツ…

  • 10

    【衛星画像】北朝鮮が非武装地帯沿いの森林を切り開…

  • 1

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...? 史上最強の抗酸化物質を多く含むあの魚

  • 4

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開する…

  • 5

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 6

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 7

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 8

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 10

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中