最新記事

日本社会

年金は何歳から受給するのが正解? 早死にしたら損だから早めにもらおう、という人の「残念な勘違い」

2023年2月28日(火)17時35分
大江加代(確定拠出年金アナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載

3つの保障がついている

公的年金が提供する安心のメインは「長生きリスク」をカバーする所得保障です。これは「老齢年金」と呼ばれ、原則として65歳から死ぬまで受け取ることができます。

そのほかにも公的年金には「障害年金」「遺族年金」という2つの保障がついています。

障害年金は、65歳になる前に病気やケガで障害状態になると受け取れます。民間の保険でいえば傷害保険に似ていますね。

遺族年金は、一家の大黒柱が亡くなったとき、残された配偶者や子どもなどに支給されます。これは民間の生命保険のような役割です。

「高額の生命保険は不要」と断言できるワケ

死ぬまでの所得保障のほかに、「障害」や「死亡」まで一度にカバーしてくれる保険は民間保険会社にはありません。

障害年金は、それほど使わないのではないかと思うかもしれません。しかし、会社員が加入する厚生年金は、軽度の障害でも手当が支給されます。しかも、障害の原因となった病気やケガの種類は問われません。視覚、聴覚、手足といった外部障害にかぎらず、がん、糖尿病、心疾患などの内部障害やうつ病、認知症などの精神障害も対象です。

図表1 障害年金は2階建て
※『役所や会社は教えてくれない! 定年と年金 3つの年金と退職金を最大限に受け取る方法』(ART NEXT)より


遺族年金もまたかなり手厚い保障です。たとえば、夫30歳、妻30歳で3歳と1歳の子どもがいる家庭で、夫が亡くなった場合、遺族年金はいくらもらえると思いますか? 若くして亡くなると保険料をあまり納めていません。それでも妻は、65歳になるまで総額で5000万円以上の遺族年金が受け取れます。これだけあれば、夫が高額な生命保険に入っていなくても、遺された家族は新しい生活に踏み出せるのではないでしょうか。

図表2 遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金がある
※『役所や会社は教えてくれない! 定年と年金 3つの年金と退職金を最大限に受け取る方法』(ART NEXT)より

「年金は貯蓄」という勘違いがあなたの年金額を減らす

公的年金を「貯蓄」と思い込んでいると、「いつ死ぬかわからないから、早くもらったほうが得だ」という発想になってしまいます。

その誤解こそが、年金を減らしてしまう原因です。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

為替円安、行き過ぎた動きには「ならすこと必要」=鈴

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 5

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 6

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    映画『オッペンハイマー』考察:核をもたらしたのち…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中