最新記事

メンタルヘルス

先延ばしをする人は、なぜ自分を「完璧主義者」と言いたがるのか?

2023年1月28日(土)09時51分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

その結果、先延ばしに関する臨床心理学の調査記録には、完璧主義者がたくさん登場する。一方、完璧主義者でない先延ばし人間(や先延ばしをしない完璧主義者)は、セラピストにあまり相談しない。それだけのことだ。

完璧主義者はものごとを先送りすることに罪悪感を覚えがちなので、自分の欠点を改めたいと思う傾向が強いのである。このタイプの人たちが抱える問題の原因は、完璧主義そのものではなく、あまりに高い理想と実際の能力の間のギャップだ。

もし、あなたが完璧主義者で、しかも達成不能な高い目標を掲げすぎて苦しんでいるのであれば、その状況を変えたいと思うのは当然のこと。

完璧主義が先延ばしの原因でないとすると、先延ばしの最大の要因はなんなのか。何百件もの研究を通じて、先延ばし人間に共通する人格上の特徴がいくつか指摘されているが、とくに際立っている要素が1つある。

それは、衝動に負けやすいことだ。せっかちで、すべてをいますぐ手に入れたいと感じやすいのである。衝動に負けやすい人は、自制心を発揮したり、楽しいことをあとに延ばしたりするのが難しい。要するに、将来のためにいま我慢することが苦手なのだ。

未処理の課題を抱えているときに感じる不安にどう反応するかも、その人の衝動性の強弱によって決まる。衝動性の弱い人は、不安に背中を押されて早めに課題に取りかかる場合が多い。

ところが、衝動性の強い人は正反対の反応を示す。締め切りの不安を感じると、途端に課題を先送りにしてしまう。不安感の発生源である課題から一時的にでも逃れようとしたり、その課題を意識から排除しようとしたりするのである。目先のことしか考えない人間がいかにも取りそうな行動だ。

それに、衝動性が強い人は、計画性がなく、整理整頓が苦手で、集中力が乏しい。私の同僚のヘンリー・ショーウェンバーグに言わせれば、「衝動をおさえるのが苦手で、忍耐心がなく、規律をもって仕事ができず、スケジュール管理のスキルに欠け、計画的にものごとをおこなえない」場合が多いのである。

要するに、衝動に負けやすい人は、前もって計画して仕事に取り組むのが不得手で、ようやく仕事に着手したあとも、すぐに気が散ってしまう。そうなると、もはや先延ばし街道まっしぐらだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 5

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中